子育てしたくなるフランス社会、子育てが困難な日本社会 | すくらむ

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国家公務員一般労働組合(国公一般)の仲間のブログ★国公一般は正規でも非正規でも、ひとりでも入れるユニオンです。

 昨日、労働総研設立20周年記念シンポジウム「人間的な労働と生活の新たな構築をめざして」に参加しました。その中で、共立女子大学教授のジャニック・マーニュさんによる「フランスの労働者家庭とその生活」がとても興味深かったので要旨を紹介します。(byノックオン。ちなみに共立女子大学は私のパートナーの母校です)


 現在、ヨーロッパの中ではフランスの出生率が一番高くて、このままで推移したと仮定すると、30年後にはヨーロッパの中でフランスの人口が一番多くなります。ただし、いまのサルコジ政権は、子ども手当などの社会保障を削減しようとしていますので実際はどうなるか分かりません。


 これまでフランスは、日本とくらべると、様々な点で子どもを生み育てたくなる社会をつくってきたことは確かであると思います。


 たとえば、フランスでは家族そろって夕食をとることは当たり前の社会になっています。また、日曜日は家族で出かけることも当たり前です。とくに子どもが小さいときは家族で出かけることを大事にしています。


 私が日本に来て驚いたのは、多くのお父さんが夜遅くまで働いていて、家に帰って来ないことです。


 【※同席していたシンポジストの山家悠紀夫さんが、マーニュさんの発言の補足説明として以下のデータを提示してくれましたので紹介しておきます】男性労働者の帰宅時間を日本・フランス・スウェーデンで比較すると、午後6時までに帰宅する男性労働者は、日本6.8%、フランス33.9%、スウェーデン70.9%です。午後6時までに帰宅する男性労働者は、日本では例外的で、フランスは3人に1人で、これを午後7時までにするとフランスは50%を超えます。午後7時までに帰宅できれば家族で夕食をともにできますが、日本の場合、午後7時までに帰宅する男性は22%しかいません。日本は午後8時以降が61.4%でそのうち午後10時以降が30%もいるのです。また年次有給休暇の取得日数は、日本は8.5日、フランスは25日となっています。(※山家さんによる補足はここまで)


 いま、フランスでは日曜日に仕事をするかどうかで熱い議論がおきています。サルコジ政権が、日本のようにフランス人も日曜日に仕事をすべきだと主張しているのです。これまでのフランス人にとって日曜日は家族のための日でした。日曜日にお店などをやっているのを見ると、そのお店で働いている人は家族とゆっくりできないではないかと多くのフランス人は思うのです。ドイツやスイスでも日曜日はほとんど働きませんが、フランス人も「日曜日は家族のための時間」なのです。


 フランスでは20歳までの子どもに毎月「子ども手当」が支給されます。「子ども手当」は、子ども2人で1万6千円です。子ども3人で3万7千円になり、4人以上になると1人増えるごとに2万円ずつプラスされ、子ども4人で5万7千円になります。


 ベーシックな「子ども手当」に加えて、11歳から16歳未満の子どもには毎月4,300円がプラスされ、16歳から20歳まで毎月8千円がプラスして支給されます。この「子ども手当」は、親が働いていても働いていなくても、収入なども一切関係なく、すべての人に支給されます。また、親が育児休暇を取ると、親に対しても国から手当が出ますし、仕事を続ける場合でもベビーシッターなどに対するお金が出ます。この金額は収入や家族構成によって様々ですが、生活に支障が出ない金額が国から支出されます。ベビーシッターの紹介なども行政が責任を持って行っています。


 学校は、小学校から大学まで基本的に無料です。フランスでは90%が公立校ですので、多くの人が無料になっています。ですから、親の給料がたとえ低くくても生活に困ることはありません。私の子どもはフランスの大学に通ったのですが、1年間で親の負担は3万円だけでした。その3万円も学生のための保険に入れるお金と図書館とスポーツセンターを使うためのお金でした。日本では考えられないことです。


 フランスの子ども手当が、子ども2人で1万6千円では、ちょっと足らないんじゃないかなと思った方もいらっしゃると思いますが、小学校から大学まで無料ですから、日本での感覚と大きな違いがあると思います。


 フランスの小学校から高校までは、1カ月半勉強して、そのあと2週間ぐらい休みがあって、1年間で4カ月間の休みがあります。子どもに1年間で4カ月休みがあると、両親が働いている場合、とくに子どもがまだ小さい場合は、ちょっと困ることがあります。そのために、日本でいえば学童保育のようなところがフランスにもあります。日本の学童保育は小学3年生までのところが多いですが、フランスの学童保育は12歳まで大丈夫です。親の収入で学童保育の保育料は違うのですが、収入が少なければ無料になります。フランスの学童保育は学校終了時間から午後7時までと、フランスの学校は水曜日が休みなので、水曜日は日中学童保育をやっています。そして、日本では親が仕事をしていないと、学童保育にあずけることができない場合が多いですが、フランスの学童保育は、親が仕事をしていなくても親が失業していてもあずけることが可能です。


 また、夏休みの場合でも、親が失業していて親は夏休みにどこにも行くことができなくても、子どもには海や山に行かせたいという場合、サマーキャンプがあります。日本での子どものサマーキャンプのイメージは3日間とか長くて1週間ぐらいかと思いますが、フランスのサマーキャンプは1カ月間です。私の子どもも12歳のときにフランスのサマーキャンプに参加しました。サマーキャンプの参加費は、私は日本で住んでいましたので、参加費が一番高いケースだったのですが、それでも4万円でした。1カ月間の食費や宿泊費、演劇やスポーツ、様々な遊びなども企画され、すべて含んでの参加費が4万円でした。これは親が失業している場合でもサマーキャンプに参加できます。


 こうした「子ども手当」や、学校無料化などの財源は、フランスの大企業が税金を多く負担しています。いまサルコジ政権は大企業のそうした税金を無くそうとしていますので、フランス国民による運動が大切になっています。