デンマークの最低賃金は2千円、生活できる賃金出せない企業は市場から退場すべき | すくらむ

すくらむ

国家公務員一般労働組合(国公一般)の仲間のブログ★国公一般は正規でも非正規でも、ひとりでも入れるユニオンです。

 ※「すくらむブログで紹介してください」と出版社から献本いただいたので、芸が無くて申し訳ありませんが、一番気に入った部分を以下引用します。(byノックオン)


 最低賃金を引き上げる会編『最低賃金で1か月暮らしてみました』(亜紀書房)の135~137ページより橘木教授の話を紹介します。


 「生きていくだけの賃金を出せない企業は、

  市場から退場すべき」という考えもある

 橘木俊詔・同志社大学経済学部教授


 (最低賃金を引き上げると)企業倒産してよいのか、失業者が増加してよいのかと主張する経営者には、次のようなヨーロッパの経営者の声があることを紹介したい。イギリス、フランスの最低賃金は時給1,200~1,300円であり、日本の700円よりもかなり高い。デンマークに至っては、2,000円を超えているほどである。このように高い最低賃金が決められているヨーロッパの声は参考になる。


 「そもそも労働者が生きていくだけの賃金を出せない企業は、社会において存在意義のない企業とみなしてよい。あるいは非効率性の目立つ企業とみなしてもよいので、市場から退場すべきだ」という“目から鱗の落ちる”話をヨーロッパの経営者から聞いた。


 労働者はある1つの企業で働くことによって生活費のほぼ全額を稼ぐのであるから、その企業がそれを保障できないのであれば、企業として労働者を雇用する資格がない、との理解ともいえる。日本でこのようなことを言えば、経営者は当然のこと、経済学者や一般の方々から猛反発を受けること必至である。「何という夢物語を言っているのだ。企業が存在しなくなれば経済は成り立たないし、たとえ低い最低賃金であっても働きたい人がいれば、企業はそういう人を雇用して事業経営を行ってよい」という声の合唱が聞こえてくる。この合唱は、失業よりかはましではないかという声の代弁でもあるし、既婚女性のパートタイマーや若者はたとえ食べていけないほどの低い賃金であっても、生活苦には陥らないという声の代弁でもある。


 私はこの2つの代弁に賛成しない。後者については、日本では1人の賃金だけで生活する人の数が増加しているので、もう時代遅れの代弁である。


 前者については、非常に低い賃金で働いている人の勤労意欲に配慮すれば、失業よりましだという論理は通用しない。生活できない賃金しかないところで、強い勤労意欲を期待することは無理である。しかも、働いていない人が受ける生活保護支給額よりも、働いた人の受ける賃金が安ければ、ほとんどの人は勤労意欲を失うのではないだろうか。加えて、人が誰でも意欲をもてるような賃金にした方が、企業にとっても生産性が上昇することによる見返りは大きいと思われる。同じ職場で同じ仕事をしながら、低い賃金にいる非正規労働者が、高い賃金を得ている正規労働者に対して不平・不満をもつかもしれないので、職場の雰囲気が悪くなる恐れがある。しかもこのような異なる処遇は不公正とも言えるからである。


 労働者に生活できない賃金しか出せない企業は、市場から退出してもらって、代わりに生活できる賃金を出せる企業の新規参入に期待する、という考え方に変換してもよいと気がついたのである。


 前者の企業は生産性が低く、非効率性も高いとみなせるし、そういう企業は退出してもらって、生産性の高い、しかも効率性の高い企業の参入があった方が、一国の経済の総生産性と総効率性を高めることにつながるので、むしろ国のためには好ましいとの評価も可能である。すなわち、多くの企業が高い最低賃金を支払っても経営を続けることができれば、労働者の勤労意欲が高くなるだけに、労働生産性が高まり、その国の経済が最強になれるメリットがある。