日本の国民はスウェーデンより「高負担」、そして「低福祉」が貧困を拡大している | すくらむ

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 自民党の総選挙マニフェストは、近い将来の消費税率アップを含めて「中福祉・中負担」をめざす方向性を明示しています。ということは、日本の現状を「低福祉・低負担」であると自民党は認識しているわけです。


 しかし、日本の現状は、「高福祉・高負担」国家と言われているスウェーデンよりも国民が「高負担」を強いられている「低福祉・高負担」国家であることを示すデータがいくつかありますので紹介します。


 まず、内閣府の経済社会総合研究所による「スウェーデン企業におけるワーク・ライフ・バランス調査」(2005年7月)の中の「第2章第6節 スウェーデンと日本の国民負担の比較」です。この調査には次のように書かれています。


 スウェーデンの高福祉を支える国民負担率を日本と比較すると、両国の社会保障給付費を対GDP比で見て、スウェーデンの52%に対し、日本は27%となっており、スウェーデンは日本の約2倍である。同じく対国民所得比でみると、スウェーデンの75%に対し、日本は35%となっている。ただし、社会保障給付金等を除いた「再修正国民純負担比率」で見ると、逆転して日本のほうが高くなる(図表2-6-2)。


すくらむ-国民負担スウェーデンとの比較


 また、出産・育児等、家族政策(育児の社会負担)関連の給付の対GDP比は日本の約7倍、高齢者・障害サービス関連の給付の対GDP比は日本の約10倍、雇用政策関連の給付の対GDP比は日本の約4倍である(図表2-6-3)。


すくらむ-スウェーデンとの比較


[※引用はここまで]


 次に、みずほコーポレート銀行顧問・元駐スウェーデン大使の藤井威氏による、スウェーデンだけでなく他の欧米諸国と日本を比較したものです。ここでも、日本は「高負担」国家です。(※下表参照。経済社会総合研究所経済政策フォーラム「出生率の回復をめざして - スウェーデン等の事例と日本への含意」〈2004年6月25日〉の基調報告資料より)

すくらむ-国民負担、他国との比較


 さらに、損保ジャパン総合研究所主任研究員・卯辰昇氏の「国民負担率概念に関する議論の整理と今後の展開」でも、以下の数字のように、スウェーデンと欧米先進主要国と比較して、日本の「国民負担率」がもっとも高くなっています。


 純負担率の国際比較(1992年対GDP比)
 (※左から▼税・社会保障負担率、▼社会保障給付率、▼純負担率)
 日本     29.2 11.4 17.8
 ドイツ     39.0 24.0 15.0
 フランス   43.7 26.4 17.3
 スウェーデン 51.0 37.8 13.2
 イギリス   35.1 20.6 14.5
 アメリカ    26.7 14.5 12.2


 また、政府の税制調査会の報告書「抜本的な税制改革に向けた基本的考え方」(2007年11月)の参考資料「法人所得課税及び社会保険料の法人負担の国際比較に関する調査」(2005年度)によると、自動車製造業の法人負担は、日本30.4%、フランス41.6%、ドイツ36.9%。エレクトロニクス製造業の法人負担は、日本33.3%、フランス49.2%、ドイツ38.1%。情報サービス業の法人負担は、日本44.2%、フランス70.1%、ドイツ55.7%。日本の企業負担は、フランス、ドイツの7~8割です。


 それから、自民党は将来の消費税率アップの方向性を、総選挙マニフェストに示していますが、全国保険医団体連合会は、消費税について次のように指摘しています。(全国保険医団体連合会ホームページ「社会保障の財源を考えてみましょう」 より)


        消費税率5%でも、税収はEU各国と同程度
        ▼各国の税収入全体に占める消費税収入の割合

すくらむ-保団連


 「日本の消費税率5%は、国際的にみれば低すぎる」、「福祉先進国のスウェーデンの5分の1、欧州各国の4分の1」とよくいわれます。しかし、国税収入に占める消費税収入の割合をみると、約22%と、まったく同程度であることがわかります。(※上のグラフ参照)


 これは、日本の消費税が「網羅的」に課税されているのに対し、欧州各国の付加価値税は、①医療・教育から住宅取得・不動産・金融など幅広い非課税項目があること、②食料品や医薬品など、生活必需品は軽減税率をとっているためです。


 財界は、消費税率を10%から18%に引き上げることを要求しています。そのねらいは、企業の税・社会保障負担を軽減することです。企業負担の軽減分は、国民が負担することになります。


 政府や与党のなかには、「社会保障の財源充実のために消費税増税を」という動きがあります。これ以上、消費税率を引き上げれば、国際的にみても「異常な国」となることは明らかです。(※引用はここまで)


 以上、見てきたように、日本社会の現状は「低福祉・高負担」国家と言えると思います。国民にとって「低福祉・高負担」となっているから、現在の貧困問題が噴出していると言えるのではないでしょうか。


(byノックオン)