努力しても報われない日本社会 - 子どもの貧困拡大する「小さな政府」「機会不平等社会」 | すくらむ

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 『週刊ダイヤモンド』(7/25)が「子ども危機 - この国で育てるリスク」を特集しています。


 40度の熱が出ても、病院に行けない子ども、電気・ガス・水道すべてが止まった家で暮らす子ども、小学校の給食しか食事が満足に取れない子どもなど、教育はおろか、食事や医療など生活に必須のものさえ、満たされていない貧困状態にある子どもたちが日本に14.3%、7人に1人存在しています。


 厚生労働省の調査によれば、3万人以上の子どもが健康保険に加入していない、いわゆる「無保険」の状態にあり、健康保険に加入していても、3割の自己負担額を出せない世帯も多数存在しています。


 また、OECDの調査によって、国際標準を大きく下回る日本の異常に貧困な教育環境を特集記事では指摘しています。


 高等教育における学生とその家族の自己負担割合は、OECD各国平均17%に対して、日本は60%と、加盟国中で最も高く、異常に突出した数字となっています。


 GDPに対する学校教育費の比率は、各国平均3.8%に対して、日本は2.9%で下から2番目。1学級当たりの児童数も各国平均21.5人に対して、日本は28.3人でこれも下から2番目です。


 教育政策の数値は、すべて平均値を大きく下回っており、日本の子どもたちは、明らかに国際標準に遠く及ばない劣悪な環境で教育を受けているのです。


 特集記事では、「学力向上を声高に叫びながら、そのための十分な教育予算を確保しない。これはもはや政策不在としか言いようがない。国の無策は、親の経済格差と相まって教育格差を拡大させている。教育格差は社会格差となって子どもたちの将来の可能性を奪ってしまう。子どもの教育こそ国のライフラインであることを、肝に銘じなければならない」と指摘しています。日本は教育についても極端に「小さな政府」なのです。


 こうした劣悪な教育環境と、7人に1人の子どもの貧困が、子どもたちの学力低下を招いています。


 OECDのPISA調査(15歳児に対する学習到達度調査)における日本の順位は、低下の一途をたどっています。読解力では、2000年の8位から2006年には12位に、数学の応用力を測る数学的リテラシーでは、2003年の4位から2006年には6位へと順位を落としています。


 こうした学力低下の原因は、低得点層の増加にあると特集記事では指摘していて、読解力の経年グラフが掲載されているのですが、一番低い得点層が2000年には数%ですが2006年には十数%へ跳ね上がっています(※掲載されているグラフに数字は明記されていません)。これは、まさに7人に1人の子どもの貧困14.3%に照応しているのではないかと私は思いました。


すくらむ-報われない社会


 そして、世界の6大都市(東京、ソウル、北京、ワシントンDC、ロンドン、ヘルシンキ)でベネッセコーポレーションが10~11歳の小学生に実施した調査(※上図参照。2006年6~7月に各都市1,000~1,300人回答)では、努力すれば報われると考えている小学生は67.7%にとどまり、6都市中東京が最も少なくなっていることが紹介されています。東京の小学生の3人に1人が、「自分の国は、努力すれば報われる社会だ」と感じられないと応えているのです。


 この調査結果は、貧困な家庭に生まれた子どもが、実際にどんなに努力しても大学進学どころか、高校進学すらあきらめざるをえない「機会不平等」な日本社会であり、多くの子どもたちの未来を奪っていることを、小学生の3人に1人が告発しているものだといえるのではないでしょうか。


 また昨日、共同通信が、「母子家庭8割が生活苦しく 給料減少、教育に影響」という要旨以下の記事を配信しています。


 父親を亡くした母子家庭のうち高校生のいる世帯で、今年6月の母親の平均月給(手取り額)は11万6千円にとどまり、約80%が昨年秋以降、生活が「苦しくなった」と感じていることが27日、あしなが育英会(東京)の調査で分かった。


 奨学金を受けている高校1年の母親計776人のうち42%から回答を得た。結果によると、月給は、前年8月の12万2200円から6,200円減少。10~14万円が最多の33%で、20万円以上は計8%なのに、10万円未満は計39%と家計の厳しさが浮き彫りになった。昨秋以降生活が「楽になった」は1%未満だった。


 教育費不足による影響(複数回答)を聞いたところ「塾に通わせられない」が43%、「学校を続けさせられるか心配」36%、「参考書などを十分に用意できない」34%、「進路を変更した」32%―などが挙がった。


 育英会の工藤長彦理事は「不況の影響で教育費を賄いきれない家庭が多い。貧困の連鎖を断ち切るために、国を挙げて子どもへの支援をしてほしい」と話している。


(byノックオン)