サラリーマンの年収は10年で30万円減、結婚も困難な貧困層増大、一方で配当3倍・役員報酬20%増 | すくらむ

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国家公務員一般労働組合(国公一般)の仲間のブログ★国公一般は正規でも非正規でも、ひとりでも入れるユニオンです。

 雑誌『プレジデント』(5月4日号)で、「給料の格差、税金の不平等 - 日本のサラリーマンは世界一つらいよ!」と題した特集を掲載しています。


 特集の言説については、同意しかねるところも多々あるのですが、意外とデータについては、きちんと提示しているので、いくつか紹介したいと思います。(byノックオン)


 ◆サラリーマンの平均年収は10年間で30万円減少 → 国税庁の「民間給与実態調査」(08年)によると、給与所得者の平均年収は、1997年の467万円から2007年の437万円へ30万円も減少しています。


 ◆この10年間で、株式配当は3倍、役員報酬は20%増 → 上記と同じ10年間で、資本金10億円以上の企業の株式配当は3倍、役員報酬は20%増加しています。(財務省「法人企業統計年報」07年度)


 ◆この10年間でワーキングプア増大、一方で年収2千万円以上の層が増加 → 上記と同じ10年間で、年収200万円以下のワーキングプアが218万人増え1032万人になり、一方で、年収2千万円以上の層が14.9万人から22.1万人に増えています。(厚生労働省「賃金構造基本統計調査」08年)


 ◆非正規社員は1,737万人(34%)を占めるまでに増大 → 非正規社員は10年間、一貫して増加し続け、10年前比564万人、10.4%増加して、1,737万人になり、労働者全体の34%を占めるまでに増大。25~34歳では10年前の1.7倍の309万人、35~44歳では同じく1.6倍の352万人を数えるまでになっています。(総務省「労働力調査」08年)


 ◆根強い女性差別、学歴差別賃金 → 男性の平均年収550万円は女性の平均年収349万円の1.57倍、201万円もの差があり、依然として女性差別賃金は根強く存在。また、大卒の平均年収は624万円、高専・短大卒は430万円、高卒は428万円、中卒は384万円。大卒と高卒の差は196万円に上り、学歴差別は厳然と存在しています。(厚生労働省「賃金構造基本統計調査」08年)


 ◆企業規模別・産業別の格差賃金 → 企業規模別では、従業員1,000人以上の大企業の平均年収は606万円、100人以上999人以下の中企業は467万円、10人以上99人以下の小企業は394万円。産業別の平均年収では、最も高かったのが電気・ガスの721万円、次いで金融・保険業の654万円、情報・通信業の627万円と続く。年収が低く抑えられているのが、飲食・ホテルの342万円、医療・福祉の418万円で、その差は実に379万円にも上っています。(厚生労働省「賃金構造基本統計調査」08年)


 ◆非正規社員、ワーキングプアは結婚も困難 → 厚生労働省が2009年3月に発表した「国民の生活に関する継続調査」によると、5年前に独身だった男性でこの5年間に結婚した割合は、正社員では24.0%ですが、非正規社員ではほぼ半分の12.1%でしかありません。また結婚した者の結婚直前の所得を見ると、400万~500万円未満が20.6%と最も多く、100万~200万円未満では10.6%、100万円未満では8.2%で、ワーキングプアは結婚も困難となっています。


 特集のもうひとつのテーマである「税金の不平等」についてはいまいちだったので、以前このブログで取り上げた武蔵大学・橋本健二教授の著書『貧困連鎖』(大和書房)の中の「金持ちほど酒税が低い」という項が、おもしろいので最後にサマリーで紹介します。


 税の不公平は、思わぬところにもある。それは、酒税の不公平である。


 酒には消費税のほかに酒税がかけられているが、その税率は、酒の種類によって違う。飲用ではないミリンを除くと、酒税が一番安いのはワインなどの果実酒で、1リットルあたり80円。逆に一番高いのはビールで、1リットルあたり220円である。


 しかし、一般的なワインはアルコール分が14%くらいあるが、ビールは5%くらいしかない。だから、酔いをもたらすアルコールの量あたりで計算すると、さらに差が大きくなる。アルコール1リットルあたりに換算すると、ワインの酒税は571円、ビールは4,400円。なんと、7.7倍もの差である。


 同じように計算すると、焼酎の酒税は1,000円、日本酒の酒税は800円、麦芽25%未満の発泡酒は2,685円。いずれもワインとビールの中間だが、発泡酒の税率はかなり高く、むしろビールに近い。


 だから、飲む酒の種類によって酒税の負担は違ってくる。ところが、どんな酒を飲むかというのは、その人の所得階級と密接に関係している。とくに、所得の低い階級によく飲まれるのが発泡酒で、逆に、ワインの消費額は、所得の低い階級では非常に小さいが、所得が高くなるにしたがって急増し、年収2,000万円以上の階級になると大きく跳ね上がる。


 だから酒税の負担は、所得が低い階級から中ぐらいの階級では重くなり、所得が高い階級では軽くなる。これを示したのが下のグラフである。


 ▼収入階級別にみた酒税の負担率(「家計調査」より作成)

すくらむ-不公平な酒税


 酒税の負担率を年収の低い階級から順に見ていくと、年収450万円あたりまでは35%を超えていて、とくにビールをよく飲む年収400万円前後では37%にも達する。ところが年収がそれ以上になると下がり始め、年収が600万円を超えると33%台になり、さらに1,000万円を超えると30%程度にまで下がる。酒税は、明らかに逆進的なのである。


 具体的な例をあげよう。量販店へ行くと、633ミリリットル入りのビールの大瓶が300円程度で売られている。この大瓶1本にかけられている酒税は139円だから、税率は46.3%である。これに対して、デイリーワインといわれる安めのワインは750ミリリットル入りで1,000円くらい。1本あたりの税金は60円で、税率はわずか6%である。高級ワインならどうか。世界一高いワインとして知られているフランス産のロマネ・コンティは、ヴィンテージ(原料のブドウが収穫された年度)にもよるが、一般的なもので1本100万円くらいする。ところが、これにかけられる酒税はわずか60円で、税率は0.006%にすぎないのである。