「ワークシェアリング」は貧困に直結する - 非正社員の均等待遇、社会保障整備、派遣法改正が必要 | すくらむ

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 朝日新聞編集委員の竹信三恵子さんが、「『賃下げの方便』から『連帯による安心』を~ワークシェアリングに必要な基盤整備とは」(『週刊金曜日』1/23所収「竹信三恵子の経済私考拡大版」)と題した記事を書いています。


 竹信さんは、「ワークシェアリングがまたしても脚光を浴びてきた。仕事(ワーク)を分け合う(シェア)ことで雇用を維持する失業対策だが、これを日本の土壌に持ち込むには、いくつもの落とし穴がある。バブル崩壊後の不況の際に、やはり持ち出された『ワークシェアリング』は、仕事の分け合いというより、賃金水準の大幅な切り下げを実現するための隠れ蓑としての役割を果たした。その検証なしでは、本当の意味での仕事の分け合いは、ありえない」、「このままでは、派遣社員などをすべて切った後で、正社員にワークシェアだからと賃下げを迫る最悪のパターンもありうる」と注意を促しています。


 竹信さんは、2002年、バブル崩壊後の不況の中で、当時の坂口力厚労相、笹森清連合会長、奥田硯日経連(現日本経団連)会長が「ワークシェアリングの政労使合意」を行い、その結果、起きたことは、正社員の賃下げと、派遣などの非正社員を増やして正社員を減らすという2つの事態だと指摘します。


 そして、この「ワークシェアリングの政労使合意」に先立つ1999年に、雇用創出をうたい文句にして派遣労働の対象業務が原則自由化されます。また、「政労使合意」の2年後の2004年には、製造業派遣が解禁され、現在、非正社員は3人に1人の割合に増加し、女性の非正社員は働く女性の半分を超えることになります。


 こうした「ワークシェアリング」のおかげで、企業は人件費を抑制できましたが、労働分配率は急落を続け、消費が低迷して内需は盛り上がらず、輸出企業頼みの極端な外需依存経済が生まれ、そこに、金融危機による外需への大打撃が来たのです。


 最後のセンテンスで、竹信さんは、「女性が低賃金で社会保障も手薄なため、男性世帯主が住宅から教育費まで、賃金から出さねばならない日本社会の構造を変えなければ、ワークシェアリングも『柔軟な雇用』も、貧困に直結する。安易な解雇に歯止めをかける本来のワークシェアリングの実現には、非正社員も含めた組織化を強めると同時に、非正社員の均等待遇、解雇された後の安全ネットの整備、労働者派遣法の改正など、『働き手を視野に入れた分け合い』のできる改革を、今度こそ実現する必要がある」と指摘しています。


(byノックオン)