ワークシェアリング以前の問題 - 欧州より毎年3カ月以上余計に違法に働かされている日本の労働者 | すくらむ

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国家公務員一般労働組合(国公一般)の仲間のブログ★国公一般は正規でも非正規でも、ひとりでも入れるユニオンです。

▼企業名/内部留保/現金、定期預金など/役員報酬(平均)


◆キヤノン 2兆9050億円/8873億円/5004万円
◆トヨタ  12兆6658億円/2兆5845億円/1億2200万円
◆日産   2兆8204億円/5039億円/3億5583万円
◆ホンダ  5兆3629億円/9544億円/6057万円
◆ソニー  2兆 850億円/1兆1761億円/2億8986万円
◆シャープ   8341億円/3270億円/1億1030万円
◆東芝     7166億円/2667億円/6087万円
◆コマツ    7911億円/774億円/1億3571万円


 上記は、有価証券報告書等(08年9月)による大企業の内部留保額などです。加えて、この上に株主配当もそれぞれ史上最高額にのぼっています。


 キヤノンの内部留保は約3兆円もあります。大分キヤノンの職場を解雇される1,200人の社員1人当たりの年収を300万円で計算すると、内部留保のたった0.1%程度です。内部留保だけでも1,200人の社員を、850年間も雇用し続けることが可能です。さらに、現金と定期預金と、史上最高額の役員報酬と株主配当が大企業には存在しているのです。


 こんな大企業が、いま「派遣切り」「期間工切り」で、雇用破壊を社会問題化させているのです。


 一昨日のエントリーで紹介したように、「経営者よ、労働者を“在庫調整”に使うな - 内部留保に手をつけるのが先、「人間の目」で経済を見よ」 との大企業批判が出てくるのも当然ではないでしょうか。


 批判されて、大企業は、「派遣切り」をやめるのではなく、「ワークシェアリング」が必要と言い出しました。


 そして、富士通マイクロエレクトロニクス(東京)では、1月から3月までの間、交代勤務を1人当たり労働時間12時間から8時間に短縮し、正社員の賃金を削減。大企業の主張する「ワークシェアリング」は実施されますが、当初の計画どおり、派遣社員約400人を切り捨てることに変わりはありません。


 マツダも、広島本社工場と防府工場で昼夜2交代制の夜間操業を中止して、1人当たりの労働時間を半減し、正社員の賃金を削減。ここでも大企業による「ワークシェアリング」は実施されますが、今月末までに派遣社員1,500人を切り捨てる計画に一切変更はありません。


 こうした事実が示すように、財界・大企業の主張する「ワークシェアリング」は、「派遣切り」の大量解雇は予定通りすすめ、加えて、新たに正社員の賃下げをするというものです。


 これは、労働者の雇用不安を利用した単なる操業短縮にともなう賃下げでしかありません。


 そもそも「ワークシェアリング」を考える前にやらなければいけないことが、日本にはたくさんあります。


 統計上の数字だけで比較しても、日本とドイツ、フランスの労働時間の差は年間400時間以上もあります。これはドイツ、フランスの労働者の3.1カ月分の労働時間にあたります。要するに日本の労働者は、ドイツ、フランスの労働者から見れば毎年3カ月以上も余計に働いているのです。


 さらに日本の労働者には、ヨーロッパには一切存在しない違法な賃金不払い残業=サービス残業が年間120時間もプラスされます。最近ではあらたに、「名ばかり店長」「名ばかり管理職」「名ばかり正社員」で、1日18時間労働を強制されるような事例が多発しているのです。


 また、日本の労働者の年次有給休暇の平均取得日数は、フランスの「34日」の4分の1以下の「8日」にしかすぎません。


 ドイツ、フランスの労働者より毎年3カ月以上も余計に働く日本の労働者に、過労死や過労自殺、うつ病などの精神疾患、労働災害などが増えるのは当然の結果といえ、日本の異常な超長時間労働が、人間そのものを壊しているのです。


 このブログで以前にも紹介したように、「非正規の正社員化・サービス残業根絶・週休2日・有休完全取得で635万人の雇用創出し日本経済は拡大」 するのです。


 サービス残業は1人当たり年間120.7時間あり、これを根絶すると118.8万人の新たな雇用が創出されます。雇用拡大への効果は絶大です。


 また年次有給休暇を完全に取得すれば、131.7万人の雇用を増やせます。


 これらは新たな法律をつくるなどの措置をとらなくても、企業が違法なことをやめ、ルールを守りさえすればいいことです。


 雇用が大事というのなら、まずとるべき方策は、違法なサービス残業の根絶と超長時間残業をなくして、人間らしい労働にもとづき雇用を創出することです。これが、「ワークシェアリング」の大前提として、まず解決しなければならない課題なのです。


 日本の企業による違法な働かせ方の横行は、「ワークシェアリング」を議論するレベルにさえ達していないことを示しているのです。この違法な労働実態を放置したままでは、「ワークシェアリング」の議論に入る前提条件さえ整わないのです。


(byノックオン)