「家族崩壊」まねくニッポンの働き方~いま家族を持つという、ささやかな望みさえ奪われている | すくらむ

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 「歴史的に見て初婚年齢が上昇したのは太平洋戦争の最中だった。異常事態に陥ると、夫婦や家族を作ることが意味をなさず、家族が崩壊する。現在の初婚年齢の上昇は、若年層にとっては戦時中に匹敵する閉塞感のためではないか」(ニッセイ基礎研究所・石川達哉主任研究員)


 週刊東洋経済(10/25)が、「家族崩壊 考え直しませんか?ニッポンの働き方」と題した力の入った特集を組んでいます。


 国立社会保障・人口問題研究所の推計によれば、就職氷河期世代の1975年生まれの女性の生涯未婚率は20%になり、1955年生まれの女性5.8%とくらべて3倍強もの女性が結婚しなくなります。また、1975年生まれの女性のうち34.3%(じつに3人に1人)が子どもを産まなくなります(1955年生まれの女性は12.7%。平均初婚年齢は1975年生まれ27.5歳、1955年生まれ24.9歳)。この数字は、景気が悪化するとさらに上回ることになるそうです。


 同研究所の守泉理恵研究員は、「非婚を望み、子どもが欲しくない人が増えているわけではない」「氷河期世代を見ると、所得の低迷による影響が大きく、特に男性を直撃している」と分析し、「今、家族を持つという、ささやかな望みさえ奪われている」のです。


 そして、就職氷河期世代は、「老後は最低限の生活もできなくなる。氷河期世代の雇用の劣化は10~20年先の日本の経済力に大きなダメージになる」(NIRA・辻明子リサーチフェロー)


 「目下、金融危機を発端に世界は大不況突入の前夜だ。氷河期世代は取り残され続け、家族を持つことは一段と難しくなるだろう。さらに自分たちの生活さえも支えきれない彼らが親の介護を担う時代が来れば、共倒れは避けられない。その先にあるのは、底辺家族の大量発生という悪夢である。『氷河期世代対策』はやがて、大規模な貧困対策に変貌する」と編集子は指摘しています。


 特集では、ロスジェネ世代だけでなく、日本の家族がいろんな階層で崩壊している実態を様々な角度から分析していますが、「家族崩壊」には4つの側面があると指摘しています。


 1つは、日本が先進国中トップを争う「貧困大国」であること。企業が若者や女性の非正規雇用を急増させたため、2006年の数字で日本の相対的貧困率は13.5%と、OECD加盟30カ国の中でアメリカの13.7%に次いで高く、とくに母子家庭(働く独り親家庭)の貧困率は2005年の数字で、アメリカ40.3%よりはるかに高い57.9%と、飛び抜けて母子家庭が先進国中最悪の貧困状態に置かれているのです。


 2つめは、日本が突出した長時間労働国であること。2000年代に入っての残業の長時間化は顕著で、先進国中最悪の長時間労働であり、他国には言葉すら存在しない過労死や過労自殺は毎年過去最高を更新しています。家族崩壊どころか、人間が長時間労働で崩壊しているのです。


 3つめは、ヨーロッパ諸国では考えられない女性の厳しい状況です。女性の望むライフスタイルとして、仕事と育児を両立して女性が子どもを欲している割合が高くなり、専業主婦を望む女性が少なくなっています。希望するライフスタイルにかかわらず、女性全体で8割強が子どもを欲していますが、両立できる制度や環境は整っていないため、若い女性ほど子どもを持たない割合は増えています。正社員の女性は約半数が出産後に退職を余儀なくされ、元の正社員にとどまれる女性は約4割しかいません。そして男性の賃金を100としたとき、女性は66にすぎないという賃金格差が女性を家庭に閉じ込める誘因にもなっているのです。


 4つめは、世帯の孤立化。核家族化とそれに伴う高齢者の単独世帯の増加。さらに非婚男女による単独世帯の増加などにより、平均世帯人員は約2.5人(1980年は3.22人)まで低下。また兄弟や親戚の数が減ったため、家族の持つ包容力、経済的なセーフティネット機能は著しく低下しています。


 特集では、日本の家族崩壊の悲惨な実態とともに、家族を崩壊させないための処方箋についてもヨーロッパ諸国の事例をあげながら、「働き方・雇用」「貧困対策」「高齢者介護」についての改善策を模索しています。


(byノックオン)