無法な労働現場・暴力支配を是正する力は若者の社会的ネットワークにある | すくらむ

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国家公務員一般労働組合(国公一般)の仲間のブログ★国公一般は正規でも非正規でも、ひとりでも入れるユニオンです。

 「少なくない若者の職場は、法律によらない力関係=『暴力』によって支配されている」と、NPO法人POSSE代表の今野晴貴さんが指摘しています。(雑誌『現代と教育』76号所収の「〈青年と労働の現場から〉社会的ネットワークの中で若者は強くなれる」〉)


 NPO法人POSSEが、3,000人の若者を対象に実施したアンケート(2006年)によると、若者の38%が「残業代の不払い」という違法状態に置かれています。若者の労働相談で特徴的なのは、若者本人は違法性に気づいて会社側にそれを指摘したにもかかわらず、会社側はまったく取り合わないどころか、逆に力関係=「暴力」によって支配するケースが蔓延していることです。


 最近目立つ労働相談は、若者が劣悪な労働条件に耐えかねて仕事を辞めようとしても辞められないという事例です。会社側から、「辞めたら損害賠償を請求する」などと言って脅される、もっとひどい事例では、「無責任なやつだ」などと言いながら殴る、蹴るの暴力をふるわれています。


 また、派遣労働の現場では「だましてつれてくる」ということが常態化しています。沖縄の若者に「半年仕事がある」「たくさん稼げる」などと言って東京まで来させて、実際の契約の段になると、低賃金で2カ月しか仕事がない、しかし東京まで来てしまっては、ここで働くしかなくなるというようなケースが多発しています。


 このように労働法があるにもかかわらず、労働者を保護する法律などないかのごとく詐欺、暴力、脅迫が多くの労働現場に蔓延しています。ではなぜ現代日本でこのような異常な状況が蔓延しているのでしょうか? この問いに対して、筆者は要旨次のように言及しています。


 日本社会全体が、労働法や社会保障を軽視して、貧困や格差は経済成長、すなわち企業活動の拡大によって解決できる問題としてとらえてきた。その結果、「労働法」とはいったい何か、労働組合はなぜ必要なのか、その意義を多くの労働者が具体的に理解できていない。加えて、労働法において最も重要な点である力関係の是正を「集団」によって行うことができるという認識が根本的に欠けている。


 しかし、若い世代にとって、労働組合はとても遠い存在になってしまっている。アンケート結果でも、職場の悩みを「誰に相談しますか、またはどのように対処しますか」という質問に対し、「労働組合に相談する」と回答した人は3,000人の中で数名にすぎなかった。多くの若者は「耐える」、「あきらめる」、「辞める」と回答している。


 最後に筆者は、「社会を再生していくために、私たちに今求められているのは、人々が孤立してしまうことのない新しい集団の枠組みをつくっていくことです。これは労働法の活用という次元だけではなく、福祉の再生、地域の再生など、さまざまな課題と連動しています。独りで耐えなくてもいい社会をつくっていくためには、さまざまな社会的なネットワークをつないでいかなければなりません。そうした営みは『社会』を強くしていき、個人が弱いままで困難に直面する状態を変えていく道筋となるはずです。『自己責任』ではなく、助け合いの仲間をつくっていくことが一番自分の身を守る力になるのだということ。だからNPOやユニオンがあるのだということ」を強調し、「社会的ネットワークの中で若者は強くなれる」と主張しています。


(byノックオン)