人間をボロ雑巾のように使い捨てる派遣法 | すくらむ

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国家公務員一般労働組合(国公一般)の仲間のブログ★国公一般は正規でも非正規でも、ひとりでも入れるユニオンです。

 現代の派遣労働者がなぜ『蟹工船』を読んで共感するのかということを、雨宮処凛さんが雑誌『世界』10月号で要旨次のように語っています。


 処凛さんが派遣の青年たちと話していて、ルポライターの鎌田慧さんがトヨタの期間工の実態を描いた『自動車絶望工場』の話になったそうです。処凛さんが「悲惨な話だよね」と言ったら、派遣の青年たちは、「自動車絶望工場のトヨタの期間工がうらやましい」「あの時代にはまだ直接雇用の道があったし、寮費はタダだったし、給料もそこそこあった。でも今の派遣労働者は、自動車工場で働いても、期間工のさらに下に位置づけられていて、同じ仕事をしていても期間工より給料が少ない。直接雇用への道も閉ざされている。その上、今の派遣の寮ではテレビも冷蔵庫も何もかもレンタル料を取られる。昔の暴力飯場でもテレビはタダだった」と口々に話したとのこと。


 現代の派遣労働者は、『自動車絶望工場』ですら、あこがれになっているというのです。そうすると、今の派遣労働者は何を読めばいいのか、それはもうプロレタリア文学しかないじゃないかという話になって、『蟹工船』にいきついた。『蟹工船』って本当に自分たちと同じ状況だよね、『蟹工船』の中に出てくる周旋屋というのは、まさに今の派遣業者そのものだよね、構造はまったく同じだよね、と派遣の青年たちは『蟹工船』に共感しているというのです。


 きょうの昼、厚生労働省前で行われた派遣法の抜本改正を求める行動で、ガテン系連帯の方や、派遣労働ネットワークの方などの発言を聞いていて、この『蟹工船』の話を思い出さずにはいられませんでした。


 ある派遣の青年が、仕事中にケガをして、頭から血を流しているのに、会社側は青年に対して、「君には選択肢が3つある。1つは自分で歩いて病院に行く。2つは会社にある薬を自分で塗る。3つは会社の車で病院に行く。ただし仕事が終わる4時間後だ」と言ったそうです。派遣労働者が仕事中にどんなにひどいケガをしても労災(労働災害)を隠蔽したいがため、絶対に救急車を呼ばないというのがまかりとおっているそうです。また、「労災をつかえば仕事がなくなるぞ」など労災隠蔽の脅しも日常茶飯事。


 現場がこんな状態ですから、厚生労働省が発表した2007年の派遣労働者の労災による死傷者数5,885人(2004年の9倍増)というのは、氷山の一角ともいえるわけです。


 また、ある派遣労働者は、数年来仕事をしてきた派遣会社の人間に、コンビニに呼びつけられ、缶コーヒーをわたされて、「明日、解雇することになったから」と言われたとのこと。派遣会社側は、「1カ月前に解雇通告すると、次の仕事を探すためなどを理由に1カ月間仕事してくれないと困るから前日に解雇通告した」と、平然と言ってのけたそうです。


 トヨタ自動車九州は、今年6月と8月あわせて、派遣労働者800人の契約を打ち切り(解雇以外の何ものでもない)ました。


 人間をボロ雑巾のように使い捨てるシステムを作り出した現代の『蟹工船』である派遣法は、抜本的に改正する以外にありません。
(byノックオン)