働く若者たちの現実~蔓延する違法状態へのあきらめ、自己責任論へと吸い込まれていく | すくらむ

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国家公務員一般労働組合(国公一般)の仲間のブログ★国公一般は正規でも非正規でも、ひとりでも入れるユニオンです。

 雑誌『世界』10月号が「若者が生きられる社会」宣言~労働、社会保障政策の転換を--と題した特集を組んでいます。興味深い論稿が多いので、何日かに分けて紹介できればと考えています。


 最初に、「働く若者たちの現実 違法状態への諦念・使い捨てからの偽りの出口・実質なきやりがい」(NPO法人POSSE代表・今野晴貴さんと東京大学准教授・本田由紀さんの共著)を紹介します。


 この論稿では、NPO法人POSSE が、2006年から2008年にかけて3年連続で取り組んできた「若者の『しごと』実態調査」をもとにした分析を行っています。


 フリーターやニートのだらしなさが「社会問題」として喧伝され、「最近の若者はおかしくなった」「だらだらしていてまともに働かない」などの言説が流布されていた2006年に最初の実態調査を実施(3000人に聞き取り調査)。フリーターの7割が週5日以上、1日8時間以上働いていて、フリーターが「まともに働かない」などという言説は偽りで、きちんとフルタイムで働いていることが判明。また、フリーターの2割強が残業代不払いの違法状態で、正社員にいたっては4割近くが残業代不払いという違法状態が蔓延しています。「職場の悩みを誰に相談するか」という質問に対して、労働組合に相談すると回答した若者は1%にも満たず、年齢を重ねるとともに職場の問題の解決そのものをあきらめ、孤立を深めていっています。


 2008年の実態調査では、違法状態を経験したことがあると回答した若者が49.9%とほぼ半数。違法状態の内容は、残業代不払い32.0%、有給休暇が取得できない18.8%、社会保険未加入9.4%、雇用保険未加入9.4%、パワーハラスメント8.8%、セクシャルハラスメント5.2%、不当解雇2.0%。違法状態への対応は、ほとんどが「何もしない」と回答し、労働組合や労働基準監督署に相談した者は皆無。こうした調査結果を受けて、論稿では次のように分析しています。


 調査結果は、若者が相談する相手として労働組合が入っていないこと、そしてそうした若者が法で定められた最低限度である労働基準法に違反する状況をも「解決することができるとは思わない」という心理状態に追い詰められていることを示している。路上でアンケート調査を実施する中で、印象に残った言葉がある。「この会社を選んだ自分が悪い」という言葉だ。集団的規制なき中で、あきらめの感情は納得する場所を求めて自己責任の論理へと吸い込まれていく。


(byノックオン)