若者を襲う孤独と不安、怒りと絶望の元凶~秋葉原事件・何が問われているのか | すくらむ

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 雑誌『世界』8月号が、「若者の働くことと生きることをめぐって 秋葉原事件・何が問われているのか」をテーマに座談会を行っています。この座談会には、ジャーナリストの鎌田慧さん、ガテン系連帯共同代表の池田一慶さん、東京大学准教授の本田由紀さん、労働経済ジャーナリストの小林美希さんら4名が出席しています。


 座談会の問題意識は、秋葉原事件の犯人がトヨタ系列の自動車製造現場で劣悪な労働条件のもと働かされていた派遣労働者であったことに焦点をあてながら、若者を襲う孤独と不安、怒りと絶望の元凶に迫っています。


 製造現場における派遣労働は、単純な作業の繰り返しで、「派遣社員に求められているのは、必要なときに決まった労働だけをこなす工具」でしかないと、実際に自動車工場で派遣社員として働いていた池田さんは語ります。


 雇用期間は1カ月から3カ月の細切れで、派遣社員の人数を決めるのは、人事部ではなく部品を扱う工務部。部品のように扱われ、働くことに喜びを見出すどころか、「いつ首を切られるかもしれない不安感、誰でもいいような労働をこなす悲しさ、もうここから逃れられないような絶望感」にとらわれ、「この状況に耐えることだけでも大変」で、その上、賃金も低く、年収は月に60時間の深夜残業をこなしても250万円弱にしかなりません。


 いつ解雇されるかわからないため、自分も周りも最初から職場に人間関係を求めていない場合が多く、正社員からは差別的な眼差しで見られるため、職場の人間関係も成立しません。


 「事件を起こした彼はトヨタの期間工の募集に落ちていたと自分で書いていますが、以前なら考えられないことです。これまでは期間工が最底辺の労働者だったからです。今はさらにその下に派遣労働者の階層ができたので、期間工の募集にすら選別が働くようになった。期間工にすら落ちて、その子会社の、それも期間工の下の派遣になり、解雇の予感にふるえている、とんでもない絶望的状況です」「最大の絶望は、そこから這い上がろうと思ってもできないことです。いま、そうしたことへの怒りが充満してきているように感じます」と鎌田さんは指摘します。


 マスコミの報道では、派遣先の関東自動車がトヨタの子会社であるということがあまり触れられません。これに対して鎌田さんは、派遣労働の自由化をおしすすめた日本経団連の会長を出し、自ら派遣労働、偽装請負などやりたい放題のトヨタやキヤノンという大企業の責任を問い、当面、派遣の原則自由化を決めてしまった1999年以前の段階に戻すこと、最終的には、前近代的な派遣労働をやめさせることが必要だとし、「自分は働かないで人を働かせて稼ぐのは人間の悪です」「今回の事件は格差拡大社会への悲惨な形での警告なのです。この事件をこのまま終わらせてはいけない。せめて状況を変えるために努力しなくては」と語ります。
(byノックオン)