問題文を読む | 論文合格したけど口述で落ちたから短答から受験し直すことになった弁理士試験受験生のブログ

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無事に最終合格して弁理士になりました(*^ω^*)

短答式試験の問題を解いた後、間違えた問題の文章を深く読んだことはありますか。

「読む」とは文字をそのまま見ることではありません。

例えば、【こんばんは。木村ジュリーって言います。】という文章を読んで下さい。この文から何を読み取ることができますか?

(1)「こんばんは。」という挨拶から夕方もしくは既に夜の状況である。

(2)名前を言っていることから、自己紹介をするシチュエーションである。

(3)自己紹介しているので、初対面の可能性がある。

(4)「ジュリー」という名から、血筋として日本人ではなく、父か母が外国人である。

(5)「ジュリー」という名から女性である。

(6)「って言います。」の「って」の部分から割と若い人、の可能性がある(ここは主観も入るでしょうが、言い方から年齢を予想した、ということです。ちょっと無理矢理ですが。)

このように、他にも’読める’ことはあるかと思いますが、「読む」とはこういうことです。




弁理士試験の問題文は、余すところなく重要な部分のみで構成されています。

特に、論文式試験の問題文は、全ての文章を考慮して答案構成をして論文を書いていくことになります。不要な文章は1つもありません。

それは、短答式試験においても同じです。

あなたが間違えた問題には、問題文から読み取れなかった何かがあります。読み取れなかった何かを理解しようとすると、それはとても有益な勉強になります。

正解が何か、を導くのではなく、問題文が言おうとしていることは何か、を勉強するのです。もちろん、正解が何かを導くことも、とても良い勉強になります。




実際にやってみましょう。

ここでは、例として、短い問題を選びました。

平成27年
〔18〕意匠登録出願の分割・出願変更に関し、次のうち、正しいものは、どれか。
5 立体商標に係る商標登録出願をした商標登録出願人は、その商標登録出願を意匠登録出願に変更することができる。

まず、「意匠登録出願の分割・出願変更に関し、次のうち、正しいものは、どれか。」という部分から、

(1)分割・出願変更に関することなので、意匠登録出願をした後の場面である。

(2)分割・出願変更に関することなので、出願が特許庁に係属している可能性がある。

(3)分割だとすると、意匠登録出願に2以上の意匠が含まれている可能性がある。審査前の場面か審査後の場面かはわからない。

(4)変更だとすると、他の法域から意匠への変更の可能性がある。

というようなことがわかります。

受験生の方は、合格者よりも知識を持っているので、もっと読めるかもしれません。

では、枝の問題文を読んでみましょう。

(1)「立体商標に係る商標登録出願」という部分から、通常の出願ではなくて【立体商標】の出願である。立体商標ということは、商標が立体的形状からなる商標、のはずである。

(2)意匠についての問題であるが、「・・・商標登録出願人は、」とあることから、この枝の主人公は商標登録出願人である。

(3)「・・・できる。」とあることから、この枝は、商標登録出願人の手続きに関する場面である。

(4)「その商標登録出願を意匠登録出願に変更」とあることから、手続きは商標登録出願を意匠登録出願に変更すること、である。

問題文が短いので読めることは少ないですが、問題文の場面としては、
「出願人は、立体的形状を商品またはサービスと結びつけて、商標登録出願をした。しかし、立体的形状のデザインがとても良い。これは簡単に真似されそうだ。そこで、出願人は、商標ではなく意匠として権利化したくなった。出願人は、立体的形状を既に商標登録出願として出願してしまったが、この出願を意匠で権利化したいと考え、弁理士に依頼した。さて、弁理士はどう答える?」
という場面が考えられます。

この場面想定が非常に重要なのです。

この場面から、意匠法の法律として、
「商標として出願された立体的形状を、意匠登録出願に変更して登録可能か?」
ということが問われているわけです。

想定される場面から、どのような法律問題が問われているかを【読む】わけです。

問題文を「見て」しまうと、一番最初に「商標って意匠に出願変更できるの?」という点だけを考えてしまいます。

実際の本試験では「変更を可能とする条文無し」ということで3秒で答えを出すことになるのですが、ここでは問題文を読むということを行っているので、問題文を読んで、

・なぜ、商標を意匠に出願変更しようとしているのか
・変更できるとしたらなぜか、あるいは、変更できないとしたらなぜなのか

ということをイメージすることが重要です。

「読む」という作業でしたら、ここで終わりですが、答えを導いてみましょう。

まず、なぜ出願の変更が認められているのか。出願変更の趣旨を述べてみましょう。

出願変更の趣旨は、簡単に述べると、「原則、出願は初めから完全なものが望ましい。しかし、出願人が、出願形式の選択を誤ったり、出願後に他の出願形式に改めたいと考えた場合に全く救済が認められないのであれば、出願人の保護に欠ける。」です。

では、商標から意匠に変更することだって可能なんじゃないの?となる。

現実、特許・実用新案・意匠の間では(時期的要件はあるものの)出願変更が可能です。

しかし、商標から意匠への出願変更を可能とする条文はない。運用で出来るというようなことも聞いたことが無い。

なぜ?となる。

そこで立ち返るのは1条、つまり保護対象です。

商標法の保護対象は? 商標の使用を通じて化体した業務上の信用である。

意匠法の保護対象は? 意匠という創作物である。

このように、商標法と意匠法とでは保護対象が大きく異なるので、出願の変更は認められていない。よって、答えは×。

1つの問題文を読むことで、どんなことを想像するか、どんな情報が必要であると判断するか、どのように答えを導くか、ということを自分なりに考える勉強をしてみましょう、ということです。

上では出願の変更が問題になっていましたが、では、意匠登録出願の分割の定義と趣旨は何でしょうか。時期的要件は?手続的要件は? もちろん、変更の時期的要件や手続的要件も知っておかねばならない。

こういうことをまとめていくと、分割や変更に関する自分のレジュメが完成します。これで意匠登録出願の分割・変更に関する知識はバッチリですね。問題文1つで勉強できることはたくさんあります。




枝の問題文は3行や4行とかの非常に長いものもあります。こういう問題文は情報をたくさん持っているので場面の想定がしやすいかもしれません。

自分はちゃんと’読んでいる’、と思っていても、実際は問題文を’見ている’のです。問題文を読んでも(見ても)よくわからないのは、問題文が言おうとしてる場面(シチュエーション)を無視し、文字が持っている情報だけで解こうとするからです。

シチュエーション?そんなのわかっているよ!とご批判を受けそうですが、では、なぜ正解を導けなかったのか。

単に知識が足りないから、というのもあるでしょうが、どのような場面のときにどのような条文や趣旨で問題に対する答えを出すのか、ということができていないからでしょう。




この「問題文を読む」という勉強は、答練で間違えた問題ではなく、短答式試験の過去問を解いて間違えた問題で行ってください。

答練の問題は、所詮、受験機関が作った問題です。弁理士試験における全ての基準は過去に出題された問題のみです。

ちなみに、答練は練習問題程度の位置づけだと考えたほうが良いです。答練で役に立つことは、3時間半という時間配分の練習くらいです。この時期は答練を毎週毎週行うことになるかと思いますが、毎週毎週3時間半以上の時間を無駄にします。その時間で他のことをやった方がいい。

しかし、絶対に受験機関に頼らなければいけないことがあります。それは全国模試です。これから本試験を受験しようとしている人たちと自分との乖離を計る必要があるからです。

ですので、答練なんてやらなくて良いです。3時間半という試験時間の感覚は、全国模試を2回やるだけでも充分理解できる。自分がこれまでに勉強した知識の確認は、本試験1ヶ月前から3年分の過去問を解くことで充分です。

「問題を解く」という作業は、本試験で行えばよろしい。それまでは、理解しなければならないこと、憶えなければならないことを必死に吸収することに全力を尽くしましょう。


短答式試験の過去問集はLECの本がとても良いです。10年分ありますが、法改正と出題傾向を鑑みると重要なのは3年分程度です。

弁理士試験体系別短答過去問特許法・実用新案法・意匠法・商標法(2016年版)


弁理士試験体系別短答過去問条約・著作権法・不正競争防止法(2016年版)

LECの問題集は体系別にまとめられているので、同じ制度を一気に確認できます。