これから弁理士試験の勉強を始める方へ | 論文合格したけど口述で落ちたから短答から受験し直すことになった弁理士試験受験生のブログ

論文合格したけど口述で落ちたから短答から受験し直すことになった弁理士試験受験生のブログ

パテノミクス、キタ━━☆゚・*:。.:(゚∀゚)゚・*:..:☆━━━!!
無事に最終合格して弁理士になりました(*^ω^*)

この記事は、弁理士試験について何も手を付けておらず、これから弁理士試験のための勉強を始めようとしている方に、短答式試験の特許法・実用新案法、意匠法、商標法の勉強方法の一つを提案するものです。


この記事では、短答式試験で出題される条約、不正競争防止法、著作権法についてはアドバイスできないのですが、上の四法については短答式試験だけでなく論文式試験にも役立つと考えています。


これから提案する方法は、自分が実際に実践してはいないのですが(ここが提案者として大変申し訳ないところなのですが)、自分が最終合格してみて過去の勉強方法を振り返ると、こういう方法を知っていて実際に実践していたら遠回りしなくて済んだよなあと思い、ここで提案することにしました。


なので、これから弁理士試験突破を目指そうと考えている方は、勉強方法や受験機関等を色々とリサーチすると思うのですが、口述落ち武者の提案を一つの方法として知って頂ければと思うのです。



提案する勉強方法を思い立ったきっかけは、やはり自分の短答対策の失敗です。では、どういう点が失敗だったのか、振り返ってみます。

◎最初から受験機関に頼りすぎた

口述落ち武者が兎にも角にも一番最初に買って読み始めた本は、田村善之(著)の『知的財産法』(第4版・有斐閣)です。初学者がまさかこの本を最初から最後まで読んでしまったため、内容が全くわけわかめ。理解できるわけがない(笑)。時間の無駄でした。
(興味がある方はこちら↓ 今は最新の第5版です。

知的財産法第5版 [ 田村善之 ]

いきなりこんな本を手にとってしまったが故、速攻で受験機関に駆け込むことになりました。

受験機関には、逐条解説、青本解説、いわゆるレジュメを使った講座がたくさんあります。初めから受験機関の講座を受ければ良かったんだ!と思いました。そのときは。


◎その結果、何から何まで一通り勉強するはめになった

入門講座は、重要な制度をピックアップして法律の概要をサッと説明する内容です。その後は、条文を細かく解説する講座に移行しました。

自分の得意・不得意にかかわらず、講座はどんどん先に進みました。

もちろん、法域をまたいで制度毎に解説する講座もありました。でも、各法律の制度をしっかりと理解していない状態で法域をまたいだ講座を受講しても全く意味がなかったのです。


◎そして月日が流れていった

受験機関の講座を受講することで、特許法第1条から商標法第85条までを一通り勉強した(つもりになっていた)のです。商標法の終わりの条文まで来ると、一番最初に勉強したはずの特許法の4条が何だったのか、既に忘れています。

講座を聞くと、勉強した感じになってしまい、定義も趣旨も原則も例外も、何一つ身についていませんでした。

そして、短答に合格するために、いつの間にか過去問を解いて間違えた問題に関連する条文を確認する、という繰り返しが始まりました。これなら短答なんて楽勝でしょ!という安易な考えです。

当然、知識が身についていないので、短答式試験に合格できるわけがありません。


◎過去問を解くのを一旦止めた

その代わり、受験機関の逐条解説を何度も繰り返し読みました。そのおかげて、ようやく制度の全体像や条文の細かい点が分かり始めたのです。

再び過去問に取りかかると、過去問の解き方が変化していきました。制度の全体像や趣旨を根拠に○×を答える手法です。それは、知識が自分の中に定着したおかげだと今は思います。

短答の問題は、条文を細かく問うているように見えるのですが(確かにそうですが)、実は特定の制度の中のほんの一部を問うているだけなのです。実は問題を大局的に見るべきなのです。

これに気づいたとき、逐条解説は確かに各条文を細かく確認するには良いが、知るべき知識はもっと大きなくくりだと思い始めました。
(とはいえ、短答式試験は実務でも使わないような条文の細かい点を問うてくるのでその対策は当然必要です。)

そして、短答式試験に合格できました。その後、論文式試験の合格を果たしたものの、その年の口述式試験に落ちて短答合格の免除が切れてしまいましたが、翌年の短答式試験に合格し、そのまま口述式試験にも合格し、晴れて最終合格できました。



前置きが長くてすみません。ここからが本題です。

上のような短答対策の失敗を鑑みると、弁理士試験、特に短答式試験に合格するためにまず何を勉強すれば良いか、口述式試験の勉強をしているときに一つの答えが見つかりました。

そう、それは口述式試験の過去問です。

口述式試験はなぜ制度毎に問題が作られているのか。条文を直接問いたいなら、「特許法は第17条についてお聞きします。まず、17条第1項は何について規定していますか。」というように条文を細かく聞いていけば良いのですが、口述式試験の問題は「特許法は補正についてお聞きします。補正はいつできますか。」と聞いてきます。

既に弁理士試験の勉強をしている方は口述式試験の内容を目にしたことがあるかと思いますが、初学者は口述式試験の問い方の意味するところを最初に理解することが大事だと思います。

つまり、初学者が最初に理解すべきことは、弁理士試験は産業財産権法の各制度(著作権法等を含めると知的財産法)を大局的・複合的に問う試験である、ということです。条文や青本の細かい内容は問題を解くためのツールに過ぎない。ツールの内容と使い方を知っていますか?と短答式試験では問われているのです。

短答式試験は、論文式試験で使う条文や青本、判例というツールの使い方ができる人をふるいに掛けるための試験に過ぎません。弁理士であればそのようなツールは知っていて当然だからです。

当たり前のことですか? 多くの方が既に理解していることですか? 多くの方は、受験機関を受講し、答練を受け、模試を受け、過去問を解き、本試験に臨んでいる。でも、短答式試験で合格基準点に到達できるのは10人に1人。結果的に、多くの方が合格するための勉強をしていなかったということです。



すなわち、口述落ち武者の初学者への勉強方法の提案、それは【口述式試験の過去問をまずはひたすら勉強すること】です。

弁理士試験が、マークシート式 → 論文式 → 口頭式 という順序を考えると、口頭式の勉強を最初に?となるのは当然。

しかし、口述式試験の過去問は、重要な制度の重要な部分を答えさせる、まさに「弁理士試験の縮図」なのです。何時、誰が、何を、どうするのか。口述式試験では、条文そのもの、定義、趣旨、時期的要件、手続的要件など、重要なポイントが何年にもわたって何度も問われ続けています。

各制度を制度毎に効率的に勉強できるのが口述式試験の過去問なのです。

各制度を理解するためなら、いわゆるレジュメを読めばいい、という方もいらっしゃるでしょう。レジュメは確かに各制度を簡潔にまとめたものです。しかし、レジュメは、それを読むことが勉強になるのではなく、自分で作ることが勉強になる、というものです。手元にあるレジュメは誰かの知識がまとめられたものであって、自分のためのものじゃない。レジュメは確かに便利ですけど、どう利用するかを間違えないほうがいい。



具体的な勉強方法は次のようになります。

はじめに、答えを隠して、問いに対して答えを言えるようにする。何度も何度も繰り返し問答を読むことになるでしょう。暗記したことは、とりあえずの知識になります。

この段階は非常につらい。意味がわからないことも多いだろう。逐条解説を聞くほうがはるかに楽だ。しかし、まずは森(大きなくくり)を見て、全体を見渡すことが重要です。木(細かい条文の文言など)に固執しないほうがいい。細かい文言を問う小問もありますが、それはそれ、と割り切ることが大事です。

学問として習得することが目的ではなく、試験にパスすることが目的です。これを忘れてはいけません。

次に、なぜ、各問いの答えがそうなっているのか、答えの根拠条文や青本、判例等を一つずつ確認していく。そうすると、各問答で条文等の何が問われているのか理解できる。口述で問われた部分を蛍光ペンでマークするのも良いかと思います。

条文等の確認作業は、口述式試験の問答を言えるようになる前でも後でも良いです。どのタイミングで条文に触れるかは、各人の勉強スタイルに合わせれば良いかと思います。しかし、条文等を確認して終わり、は絶対に駄目です。

条文等の確認作業にかかわらず、答えを隠して言えるようにして下さい。これだけは妥協しないで下さい。

これにより、重要な制度や条文を押さえることができます。しかし、短答式試験では、口述式試験で問われないマイナーな条文もたくさんあります。それは、細かく確認していくしかないです。その際、既に学んだ制度のどれに関連するのか意識すべきです。考え方は、条文がどの制度のどの部分に該当するのか、常に大きなくくりの中の条文をイメージすることです。



ここまでは口述式試験の過去問と条文等を勉強したわけですが、で、それが短答式試験の問題を解けることになるの?と普通はなりますよね。



では、いくつか適当に問題をピックアップしてみましょう。

◎平成27年 第40問の枝1
登録意匠に係る物品の製造にのみ用いる物を譲受け、業としての譲渡のために所持する行為は、当該登録意匠に係る意匠権を侵害するものとみなされる。

この問題は、一番最初に「意匠権の侵害行為に関し、次のうち、正しいものは、どれか。」と聞いているように、意匠法、意匠権、権利侵害の問題であり、特に間接侵害に関する問題である、と一瞬で判断します。というか、できるようになります。

答えは「×」ですね。

○口述式試験平成22年2日目午後意匠
意匠に係る物品を所持する行為については、法上何か規定されていますか?
→38条2号において、登録意匠又はこれに類似する意匠に係る物品を業としての譲渡、貸し渡し又は輸出のために所持する行為は侵害とみなす旨規定されています。(意38条2号)

これに関連する事項を勉強していれば解けますね。間接侵害の趣旨から考えても解けるはずです。

◎平成27年 第41問の枝1
登録異議の申立てについての審理において、審判官は、当該商標登録の取消しの理由が登録異議申立人の申し立てない理由であっても、登録異議の申立てがなされた指定商品について当該商標登録を取り消すべき旨の決定をすることもできる。

この問題も同じく、一番最初に「商標の審判及び登録異議の申立てに関し、次のうち、誤っているものは、どれか。」と聞いているように、商標法、審判、登録異議の申し立ての問題であり、特に登録異議の申し立ての審理についての問題であり、さらに言えば審査側の問題である、と一瞬で判断できるようになります。

答えは「○」ですね。

○口述式試験平成19年5日目午前商標
3条1項3号違反として登録異議の申し立てがされた場合、4条1項15号違反として商標登録を取り消すことはできますか?
→はい、登録異議の申し立てについての審理においては、商標権者、登録異議申立人又は参加人が申し立てない理由についても、審理することができます。(43条の9第1項)
条文で解ける問題ですが、登録異議の申し立ての趣旨を考えると条文を知らなくても解けるはずです。

このように口述式試験の過去問で勉強した知識は、間違いなく、短答式試験で輝きます。当然ですが、口述式試験の対策にもなります。

論文式試験では、当然に四法の知識をフル活用しなければなりません。口述式試験の過去問で培った知識は論文式試験で必ず役に立つでしょう。



口述式試験の過去問は市販されていますので、以下の本を参考にしてみてはいかがでしょうか。


TACなら、

弁理士試験口述試験過去問題集(2015年度版) [ TAC株式会社 ]


LECなら、

平成27年度版 口述アドヴァンステキスト 【綴じあり版】 (レジュメ) (口述アドヴァンステキスト)


これらの本は、根拠となる条文や改正本、判例等の情報がしっかりと記載されていますので、過去問を繰り返し読んだ後に条文等を確認する際に安心です。

口述落ち武者はLECの本を使っていました。大きいし、書き込みもできますし、使いやすいです。



さて、初学者が一番最初に一番最後の試験である口述式試験の過去問を勉強することは、他の受験生と比べて恥ずかしいことですか? 異端児ですか? 誰もやらないことですか? 最終合格者数は、全受験者数の数%です。重要なことは、自分が他人を差し置いて弁理士試験に合格する、ということをお忘れなく。



最後に、口述落ち武者が提案する方法は、短答式試験になかなか合格できない方にもかなり有効だと考えています。

口述式試験の答えを隠して、さて、何問答えられますか? 口述式試験は最後だから勉強していない? いやいや、短答式試験で問われていることが口述式試験でも問われています。それに答えられるようになれば、短答式試験における産業財産権法の正解数は飛躍的に伸びるはずです。