1033. ボーン・アイデンティティ(03)/ボーン・スプレマシー(05) | 同世代名画館DX

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昭和37年生まれの支配人です。小学校でライダースナックを川に捨て、中学で赤いシリーズに毎週熱中、高校で松田優作に心酔した世代です。50~60代の皆さん、いつかどこかで観た映画とともに、時間の旅をお楽しみください。

マット・デイモン主演の“ジェイソン・ボーン”シリーズはある意味、世にも珍しいシリーズだ。
全部で3作作られたが、1作目より2作目、2作目より3作目と、回を追うごとに出来が良くなって行くのだ。長いこと映画観てるが、こんなシリーズは他に知らない。


人気作家ロバート・ラドラムの代表作「暗殺者」を、ラドラム自身が製作に加わって映画化した「ボーン・アイデンティティ」。
「暗殺者」はミステリ人気投票でベストテン入りするほどの名作だから、10年以上前に読んでた。「狙撃者」の邦題でTVドラマ化され、「将軍」のリチャード・チェンバレンと「チャーリーズ・エンジェル」のジャクリーン・スミスが出てたのも知ってる。今さら何で「暗殺者」が?って気がした。
記憶喪失だけど、実は鍛え抜かれたスパイで、身体が勝手に動いて敵を倒しちゃうという主人公を、マット・デイモンが演じるというのも「え~っ?」って感じだった。「グッド・ウィル・ハンティング」「リプリー」など青白い知性派のイメージだったから。
それもあって、結局私は劇場に行かなかったけど、意外とスマッシュ・ヒット。監督は、「Mr.&Mrs.スミス」のダグ・リーマン。娯楽アクションの職人らしく、手堅くまとめはしたけど、それ以下でもそれ以上でもない出来栄えだった。

ラドラムの原作は三部作で、回を追うごとに恐ろしく長くなるし、新潮文庫から角川文庫に代わる。一応買って読んだ。


で、第2作「ボーン・スプレマシー」。好評につき、デイモン君がまたボーンを演じる。結構アクションもやるんだ。ガンバってる。
問題は監督。ここで新人ポール・グリーングラスに交代。これが吉と出た。
予告編を見てビックリ!デイモンが乗った車が横から思い切りぶつけられて大回転!高速で中央分離帯に乗り上げるとこを運転手目線で見せる。あ、危ない!!
これって面白そうじゃねえか?と思ったけど、1作目を行ってないから劇場へは行かず、ビデオで観てまたビックリ!やっぱり面白れえ!
カーチェイスがスゴい映画は、「ブリット」「フレンチ・コネクション」とかあるけど、これはそれらを遥かに超えてる!
当然人気は急上昇。こういうのは口コミで広がる。ビデオは高回転。そしてグリーングラス監督は次作「ユナイテッド93」も高評価。


グリーングラス連続登板の第3作にして完結編「ボーン・アルティメイタム」は、シリーズ最高傑作!もちろん興行的にも前2作を大きく上回る大ヒット!私も今度は迷うことなく劇場へ行った。

2010年春にはグリーングラス&デイモンのコンビによる新作「グリーンゾーン」が公開。

さらには、完結した筈のシリーズを無理やり復活させた「ボーン・レガシー」も製作された。ただし、マット・デイモンは出演せず。おいおい、亜流かよ?


グリーングラスが監督した「ボーン・アイデンティティ」が観たいものだと痛切に思う。でも、誰よりも無念なのは、第1作完成後逝去した原作者ラドラム自身だろう。自作がこんなに面白いシリーズに化けたなんて、「アイデンティティ」の時は感じなかったはずだから。ラドラムに合掌。