1009. 血と骨(04)/クィール(04) | 同世代名画館DX

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昭和37年生まれの支配人です。小学校でライダースナックを川に捨て、中学で赤いシリーズに毎週熱中、高校で松田優作に心酔した世代です。50~60代の皆さん、いつかどこかで観た映画とともに、時間の旅をお楽しみください。

昔レコードにはA面とB面があった。B面はオマケのようなものだが、時にアーティストはイメージと違う作品を入れたり、A面で出来ない冒険をすることもあった。
映画には表裏はないけど、監督には多面性を持った人もいる。例えば、崔洋一監督。ハードボイルドからコメディまでこなすベテランだが、今日の2本も全く対照的だ。これを1年の間に発表してるんだから、なかなかのもの。


「血と骨」は、梁石日による小説の映画化。
朝鮮から来日し、戦後のどさくさに、持前の強欲ぶりで事業に成功し、巨額の富を得た男の半生。凶暴な男に怯える家族、彼を憎みながら訪ねて来る、妾に産ませた息子などとの、ドロドロの愛憎劇。
主演はビートたけし。TVドラマでは犯罪者役などで幾多の代表作を持つ彼だが、自監督作では演技が甘く、今一つだったが、これは凄まじい。「御法度」では俳優同士で共演した崔監督のメガホンに見事に応え、「戦メリ」以来の映画での当り役となった。キネ旬ほか、演技賞も総なめ。
同じく助演男優賞に輝くのが、オダギリ・ジョー。たけしの息子役で、体を吹っ飛ばす大ゲンカは、往年の「寺内貫太郎一家」の小林亜星と西城秀樹を思い出させる(知らないか?)。
「ALWAYS 三丁目の夕日」とは正反対の、激動の昭和がほとばしるように描かれているハードな作品だ。


もう1本は「クィール」。そう、「盲導犬クィールの一生」の映画化。
こちらは、ちょっと甘い家族向け映画。私も娘と婆ちゃん連れて、3人で劇場へ行った。
プロデューサーに「崔洋一のディズニー映画が観たい」と言われ、撮る決意をしたそうだが、まさに崔監督としてはかなり異色のジャンル。
盲導犬は、幼少期はパピーウォーカーという一般家庭に育てられ、その後トレーナーの訓練を受けて、実際に目の不自由な人の盲導犬となる。その複雑な人生を、実話に基づくこの本や映画で知った人も多いことだろう。
一足先にNHKがドラマでやってた。こちらはパピーウォーカーが沢口靖子で、盲導犬を使うのが玉置浩二。この人は性格が複雑なのだが、玉置浩二の起用が意外で面白かった。
映画版は小林薫がやってた。彼では巧くて当然なので、その分面白みが減った。パピーウォーカーは寺島しのぶ。トレーナーの椎名桔平が良かった。
動物ものではあるが、決してウェットにならず、カラッとした演出なのが、崔洋一風であった。物足りなさを覚える人もいたと思う。


興行的には「クィール」の方が稼いでるけど、崔洋一としてはどっちがA面?B面か?