679. ブロードウェイと銃弾(95)/マンハッタン殺人ミステリー(94) | 同世代名画館DX

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昭和37年生まれの支配人です。小学校でライダースナックを川に捨て、中学で赤いシリーズに毎週熱中、高校で松田優作に心酔した世代です。50~60代の皆さん、いつかどこかで観た映画とともに、時間の旅をお楽しみください。

久しぶりにウディ・アレン作品。
アレンで一番好きな作品は、「カイロの紫のバラ」である。以下、「ハンナとその姉妹」「ラジオ・デイズ」「カメレオンマン」などが続く。これらの作品発表は集中しており、アレン最充実期と言える。

この後、しばらくシリアス路線が続く。私も、「ラジオ・デイズ」の後の「セプテンバー」を劇場まで行ったら、面白くも何ともなくて、それ以来劇場行きを敬遠した。
実際、「私の中のもうひとりの私」(サイコスリラーかい!)「重罪と軽罪」「アリス」と、全く気が重くなるような題材ばかりだった。この頃、ポスターやチラシの仕事をしてたので、ストーリーを読んでは、どんどんアレンが別世界の高みに上って行くような気がしてた。
この間、オムニバス「ニューヨーク・ストーリー」の1編「エディプス・コンプレックス」が、久々の爆笑編でうれしかった。あと、ベット・ミドラー共演の「結婚記念日」もおかしかったが、これは出演のみだった。
「ウディ・アレンの影と霧」を挟んで、「夫たち、妻たち」で久々にアレン作品を観た。と言っても、既に岡山に帰っていた私はビデオでしか観る方法はなかった。
これは、長期間に亘るミア・ファローとの同棲生活が、アレンが養女に手を出したということで破局した切っ掛けとなった作品。実生活と微妙に重なる物語がシニカルでかなり面白く、久々にアレンを見直した。


次が「マンハッタン殺人ミステリー」。
ファローと別れたから、という理由だけでもあるまいが、前恋人ダイアン・キートンと約15年ぶりに共演。
ミア・ファローは、何せ「ローズマリーの赤ちゃん」だから、喜劇演技にも少し狂気が混じっている。一方キートンは、知性もあるが、どこか脳天気な明るさがある。数年前の「恋愛適齢期」での一発ドッキリヌードなどは、キートンならやりかねないもの。
題名通り、おかしな夫婦アレンとキートンが、隣の奥さんの死と旦那の行動に不審を感じ、素人探偵する話。この爆笑夫婦漫才は、ファローとでは出来なかっただろう。実は傷心のアレンが、飛び切りのコメディで、元カノと一緒に癒してる感じ。


勢いづいて、次作「ブロードウェイと銃弾」では、久々にアカデミー賞にもカスり、キネ旬でもベストテン入り。
キートンは出てないが、「ハンナとその姉妹」で助演女優賞のダイアン・ウィーストが再登板で、またもオスカーをゲット。
アレンも出てなくて、主演はジョン・キューザック。彼が演じるブロードウェイ劇作家が、マフィアの愛人を出演させることでスポンサーになってもらうが、愛人は超大根。共作者が愛想を尽かし、キレた末に彼女を殺しちゃう。マフィアに知れたら大変。舞台は盛況、裏では銃弾の恐怖。
複雑だが、抜群のストーリーに、ブラックな笑いもいっぱい。久々のアレン喜劇の傑作だった。三谷好喜「ザ・マジックアワー」のストーリーが何かに似てる気がしてたが、これだね。


ここから、またウディ・アレンは面白くなって来る。特に喜劇中心で、出演もマメにして、楽しませてくれている。何より、毎年1本は撮ってくれるところも嬉しい。
ウディ・アレン映画は、大人の楽しみなのである。