石川美代子先生より、おくられてきました短歌誌「渾」「楡」です。

 

  短歌誌「渾」第84号を見ていきたいと思います。まず、表紙の画に目

  が止まります。シンプルなラインで描かれた子供の描いたような温か

  さを持つ船の絵、パウル・クレーの作品です。


 

     白き抱布に(あ)れしばかりの嬰児(こ)を抱きぬ初めて

     母となりたる窓辺

 

     八十七歳誕生祝の包み解くマフラー軽く暖かくして

 

     葱キャベツ肉を包みて餃子焼く今宵集まる夕餉の笑顔


 

  <特集・つつむ>にて、石川先生が「包む」という題で詠まれた短歌

  十五首のうちの三首を掲載させていただきました。

 

  短歌を詠みはじめたのは二十歳ごろだそうです。それをずっと継続

  され、短歌に一身ささげられているような姿勢が垣間見られ、反省さ

  せられました。

  短歌の内容は、難しいことは詠まれていませんので、そのままご鑑賞

  いただけたらと思います。

 

  石川先生は、講義にて土屋文明を取り上げられていました。文明の

  歌は<平明容易>、石川先生の作品の中にもそれが生きているい  

  るように感じられました。


 

  短歌誌「楡」の感想ですが、ぎっしりと短歌や評論・エッセイが詰まっ

  た充実した短歌誌だと思いました。また、短歌界の課題ともなると思

  いますが、高齢化というものも感じました。

 

  表紙裏の「社会詠、とくに時事詠について」(長田泰公)、特に「楡」

  2016年5月号に目が止まりました。

 

    とくに昨年九月十九日、参議院での「平和安全保障関連法案」の

    強行採決は国内各層に衝撃を与えた。歌壇も例外ではなく、京都

    では九月二十七日、吉川宏志氏が提唱し、永田和宏氏などが協

    力して「時代の危機に抵抗する短歌」という緊急集会が開かれ、

    立見席まで出る盛会だったという。

 

  吉川氏といえば、短歌結社「塔」の主宰者です。前主宰の永田氏も

  ご協力されたとのことで、かなり大きな規模だったのでは?と想像さ

  れます。

  

  歌人の集まりですので、単なる政治的反対集会ではないと思います。

  時代の危機にしなやかに抵抗し、鋭く時代を見つめ抉り取る姿勢を

  具象化されたものなのかもしれません。(人づてなので、詳しいことは

  わかりませんので、あくまで推測です)

 

    総理語る一語一語の危ふさよ戦争知らねば事もなく言う

                                石川美代子

 

  石川先生より、あまり戦争の事はお聞きしたことがありませんが、空

  襲で家が全焼したというようなことをお聞きしたような記憶があります。

 

  世界情勢もかなり不安定になってきています。それにより、また表現

  も変化してくることでしょう。言論の自由、表現の自由は守りたいもの

  です。