本物の勉強の価値はアウトプットの質 | あべこう一(阿部浩一) Official Blog

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シンガーソングライター

 小難しいことをシンプルにわかりやすく伝える能力にこそ、その人の知的センスが問われます。NGO職員時代、機関紙の編集を担当していて、文章を編集したり書いたりするときは「中学生が理解できる」ということを心がけなさいと上司から教えられたものです。ところが世の中には、小難しいことをさらに小難しく提示する“頭のいい人”のほうが多い気がします。

 そうではなく良いほうの見本でいえば、ジャーナリストの池上彰さんや『声に出して読みたい日本語』の齋藤孝さんなどがあてはまるのではないでしょうか。本物の学問や勉強の価値というものはアウトプットの質で、それがどれだけお二人のように多くの人の役に立っているかということが一つあるはずです。

 今年69歳になる母は20年前にうつ病を患ってから、併発した他の病気やくも膜下出血で倒れたこともある影響などで障がいもあり、今は私の故郷である山口県の老人ホームで生活しています。

 元気なときはそれなりに社会の動向や政治にも関心があって、先日電話で話したときはトランプ米大統領の話題になりました。トランプさんの良し悪しは置いておいて、私は母にアメリカ社会も格差があって、貧困層や将来に希望を持てない若者ほど、ああいうタイプの人を支持するトホホな状況は日本も同じだという趣旨のことを述べました。

 ところが母はその私の話があまりピンとこないようでした。弱い立場にある人たちにとってわかりやすく映ったり、強そうで頼れそうに見えたりする指導者でも、実際には齟齬やギャップがある云々の解説を試みたのですが、うまく説明できずに途中であきらめてしまいました。

 自分は何となくわかっている気でいても、阪神タイガースやミステリー小説が好きな老人ホームの母を納得させられないレベルの私の政治知識なんて。まだまだ修行が足りないなぁと感じた出来事でした。