行政法を得点源にするために・その2 | 彼の西山に登り

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今日から9月です。
特別区で区面接の提示があった方は、早速面接対策に入りましょう。
各区・組合の面接は、市町村の面接と同様、自治体研究が必要です。


さて、

前々回の記事で、行政法に取っつき難い印象を持ちがちな要因について、以下の点を挙げ、そのうち①・②について、どのように対策していったらいいかについて書きました。

①難解な用語がしばしば登場すること
②身近でない制度がしばしば登場し、そのため判例が理解しにくいこと
③行政作用法に統一法典がないことから、全体像をつかみにくいこと
④憲法、民法、刑法、民事訴訟法など、他の法律の知識が必要なこと


今回はその続きです。
③・④に共通して言えるのは、特に独学の方は、いきなり過去問に取り掛かるのではなく、薄いテキストなどで全体の概略をつかんでから過去問に取り組むようにする方がよいということです。
もちろん、大学や予備校で講義を受けている方は、講義に沿って過去問に取り組めばいいでしょう。
「急がば回れ」といいますが、行政法ほどこの諺があてはまる科目も少ないですね。


③行政作用法に統一法典がないことから、全体像をつかみにくいこと

行政法の分野のうち、行政作用法(行政主体と私人との間の行政法上の権利義務ないし法律関係を規律する)は、膨大な量の個別法があります。※

もちろんこれを全て勉強するなどということは物理的に不可能ですから、大学の講義科目や国家試験の試験科目における「行政法」では、「行政行為」や「行政指導」など、個別の行政作用法で設定された様々な制度を、その特徴によって分類し抽象化して設定したモデル(『行政の行為形式』などと呼ばれます)を勉強します(いわゆる『行政法総論』)。
そして、逆にこのモデルを当てはめて、判例などに登場する個別法の制度を分析していくわけです。
例えば、食品衛生法に基づく飲食店の営業許可は「行政行為に当たる・当たらない」とか、医療法に基づく病院開設中止勧告は「行政指導といえる・いえない」など。

もっとも、公務員試験においては、基本的に行政法総論で論じられる、抽象的な「行政の行為形式」を勉強すれば大体事足ります。
その意味では、抽象的で分かりにくいかもしれませんが、分量的にはぐっと圧縮されます。
ただ、この「行政法総論」の統一法典化は、試みた国もありますが、我が国ではそのような企図はされていません。この部分の整理は、専ら学説に任されています。

そこで、「木を見て森を見ず」に右往左往せず済むよう、個別の内容を勉強する前に、例えば「法律→行政行為→強制執行」といった行政過程の全体像を意識的に把握しておき、部分的内容を勉強する都度、参照してその位置付けを確認することが重要になります。
この全体像は、学習用のテキスト類で意識して説明されていることが多いですし、大学や予備校で講義を受けている方は、講義の中で先生が言及すると思います。


④憲法、民法、刑法、民事訴訟法など、他の法律の知識が必要なこと

行政法は、法学の中では新参者です。
そこで、行政法の内容は、より歴史のある様々な法律から制度や概念を借りてきて説明されることがままあります。
その場合、前提となっている他の法律の知識があるとないとでは、理解も記憶も違います。

そこで、行政法は、憲法や民法の勉強がある程度進んでから(完全に終わってからである必要はありません)取り掛かった方が、抵抗感が少なくなるかと思います。
「憲法、行政法、民法」の順であることが多い公務員試験の専門試験の科目配列から、民法より先に行政法を勉強する方もいますが、私見では、民法総則、物権、債権総論を済ませてからの方が、分かりがいいのではないかと思います。

また、行政の行為形式の1つ「行政罰」では、「故意犯処罰の原則」など刑法の知識が若干必要になります。また、行政訴訟では、「処分権主義、弁論主義」など、民事訴訟法の知識が多少必要になります。
これは、極断片的な知識に止まりますから、講義やテキストの説明を参照すれば済みますが、いきなり過去問に取り組んだ場合、公務員試験ではマイナー科目で全く触らない受験生も多い法律ですから、「問題の所在」がつかめずに難渋することもあるかもしれません。


※ 総務省行政管理局が提供しているデータ(こちら)によると、平成28年8月1日現在における我が国の法律の総数は、太政官布告である爆発物取締罰則を含め1958件です。推測ですが、このうち少なくとも過半数は行政法でしょうし、その大部分は行政作用法に属する法律ではないかと思います。