「タレンタイム〜優しい歌」ヤスミン・アフマド監督作品 | KOFNのある日どこかでJazz

「タレンタイム〜優しい歌」ヤスミン・アフマド監督作品

 

 

もう25年ぐらい前になるが、仕事でマレーシアのペナンに1年近く住んでいたことがある。

マレーシア映画というのはおそらく初めて見たと思うが、字幕スーパーを追いかけなくてもマレー語の意味がわかるシーンが結構あって意外に驚いた。マレーシアは自分の中で今でも大きな存在なんだと思う。あの頃自分も若かったしそこで色んな影響を受けた。だからこの映画の中で語られてることは僕にはとてもよくわかる。マレーシアにはマレー人、インド人、中国人がいるが、仕事や学校ではうまくやってるように見えるし彼らも努力している。でも私生活では宗教も生活習慣も違うので別々な生活をしていて交わることはほとんどなかったと思う。ただ、気持ちはこの映画のような感じで、一言で言うと皆とても優しい、弱いけど優しいという感じだ。でも、優しさというのは弱さを打ち消す程に強い存在に成り得ると今は思う。僕は仕事柄、というか日本人としてどの民族とも公平に付き合った。義務感のようなものは全くなく自然に公平に付き合えたと思う。それは今でもよかったと思ってる。映画の中に出てくる家族、リビングルーム、とても懐かしく思う。食事。お祈り。バイク。

 

さて、映画だが、アピチャッポンの映画を思い出したが、

これは日本では作れないタイプの映画だ。

ふわっとしていてメリハリがない、もちろんなくていいのだが。

さっきも同じようなことを書いたが、優しさは大きい。

20代の頃、僕は優しさという言葉が嫌いだった。「親切さ」は具体的にイメージできるのでわかるが、「優しさ」は曖昧でなんか偽善めいていると思った。

ただ、今はそれも受け入れることができる。優しさのようなものが本当にあることも理解できる。

「親切さ」には意思があるが、「優しさ」には意思がない。本能、本心なんだと思う。

この映画は「優しさ」の視覚化に稀有な例で成功してるのかもしれない。

優しい歌、タレンタイムにこの副題を付けたことは、正しいと思う。