「ヤンヤン 夏の想い出」エドワード・ヤン監督作品 | KOFNのある日どこかでJazz

「ヤンヤン 夏の想い出」エドワード・ヤン監督作品





エドワード・ヤン(楊徳昌)監督の2000年公開の遺作となった映画。
英題は、Yi Yi: A One and a Two。
国際的には評価の高い作品だが、本国の台湾では正式に公開されてないという。

173分という上映時間の中で、登場人物に劇的な事件は起こらない。
日常の倦怠や喧騒や、静かな心の揺れ、ささやかな希望と諦めがあるだけだ。

結婚式で始まり葬式で終わる流れは日本の小津安二郎の映画を思わせもするが、
男女の場面などはむしろ成瀬巳喜男の映画を思い出させる。

ヤンヤンが写した家族それぞれの後ろ姿の写真。
「人が見たことのないようなものを見せたい」
裏がある人たちのその裏側は、しかし家族の誰にも知られることはない。

人は常に孤独(一人)だが、表と裏が一つに調和することはない。
また、一人は一個の人間として二つに分かれることも出来ない。
「人生をやり直すチャンスは要らなかった」という、ヤンヤンのお父さんの台詞が沁みる。

エドワード・ヤンの、引き過ぎず寄り過ぎず、人をありのままの姿で見守る視線があたたかい。

映画は人を超えないし、人もまた映画を超えないのだ。