「横道世之介」 沖田修一監督作品 | KOFNのある日どこかでJazz

「横道世之介」 沖田修一監督作品

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2時間40分がこんなに短く感じられた映画もなかった。テンポがよくて退屈なカットが全くなかったし、
脚色も撮影も素晴らしかったと思う。80年代の雰囲気を再現した美術も秀逸だった。

終わってしまうのが残念だった。観終わって思い返す全てのシーンが自分にとって大切なものに思える。
あの時代、誰にでも「横道世之介」がいたと思う。

少女から「初めて好きになった人のことを覚えてる?」と訊かれて「覚えてる」と答える時の吉高由里子の表情の美しさ。エリック・ロメールの映画のように豊かな自然光が彼女の髪や顔を柔らかく包み、窓の外に緑が見える。これが映画だと思う瞬間。

最近テレビで「蛇にピアス」を見たばかりだったので、高良健吾と吉高由里子のこの五年振りの共演は、「蛇にピアス」の主演の二人が「横道世之介」の中で再会が叶ったようで感慨深かった。

雪のシーンで突然カメラが空高く上がって真上から二人の動きを捉えたり、足跡を写したり、
病院でお互いの名前を何度も呼び合う時の切り返しのクローズアップとか、階段の坂道を歩くところとか、
映画的に至福で恍惚な時が何度も訪れた。見終わってまたすぐ観たいと思った。

高良健吾の演技も素晴らしかったと思うが、吉高由里子の可愛らしさといったら。

吉田修一の原作はまだ読んでない。
彼女はフランスに短期留学してすぐ帰ってくる予定のはずだったが、
そのまま帰ってこなかったのだろうか?



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