「なんとなく、クリスタル」 サウンドトラック
1981年
SIDE A
1. I Go Crazy / Paul Davis
2. Call Me / Randy Vanwarmer
3. 99 / TOTO
4. Young Girls / The Isley Brothers
5. We Are All Alone / Boz Scaggs
SIDE B
1. Tell Me That You Love Me / Steve Gibb
2. The Old Songs / David Pomeranz
3. You Can Have Me Anytime / Boz Scaggs
4. Seeing You / Jimmy Messina
5. Moonlight In Vermont / Willie Nelson
若い頃、自分ほどの洋楽好きがまわりにいなかった僕が未知の音楽に触れるためには、ラジオや本からの情報が重要でした。
とりわけラジオのDJからの影響は大きく、選曲がいいと、その人のかける音楽がそのまま自分の好みになっていったりもしました。
そんな中で影響力がとても大きかった一人が田中康夫氏です。
彼を知ったのは80年の大ヒット小説「なんとなく、クリスタル」でしたが、翌年映画化された映画音楽は彼が選曲したこだわりの洋楽が使われてました。
この選曲のセンスが素晴らしかったわけですが、裏話として、それらの曲の使用料に映画制作費の多くを割いてしまい失敗作となったともいわれています。
このサウンドトラック・アルバムはCD化されていません。映画もビデオソフト化されていません。おそらくあらたに曲の使用契約を結ばなければならないためだったと思います。
田中康夫は小説家でしたが、同時に、暇さえあればレコード店にいるような無類の洋楽狂いでした。
彼がラジオのパーソナリティーや選曲を担当する番組でかける曲は、僕が今まで聴いたことのない種類の洒落た実のある洋楽で、大変ショックを受けました。僕がブラック・コンテンポラリーが好きになったのは実は彼の影響が大きかったかもしれません。
今となっては有名な曲もありますが、
このサントラから何曲か紹介しましょう。
※I Go Crazy / Paul Davis
1978年全米7位のヒット。数あるAORのバラードの名曲の中でも傑作といわれ、ロングヒットとなりました。
※Call Me / Randy Vanwarmer
1979年に発表され、アルバム・タイトル曲の「アメリカン・モーニング」は、日本のCMで使用されました。
この曲「Call Me」を学生時代に友人の映画作家に紹介したら、彼の短編映画のテーマに使ってくれました。
※The Old Songs / David Pomeranz
1980年に発表され、翌年にはバリー・マニロウのカヴァーで全米15位のヒットになりました。
美しく親しみやすい歌詞とメロディーは永遠のマスターピースです。
田中康夫は今までに一冊だけ「小説」兼「洋楽のガイド本」を出しています。最初「たまらなくアーべイン」というタイトルで出され、後に加筆修正されて「ぼくだけの東京ドライブ」として出されたその本は、ドライブする場所、朝、昼、夕、夜、それぞれのシチュエーションに合わせた音楽をチョイスして紹介するという内容です。
登場するアルバムは実に845枚、70年代後半~80年代前半にかけての極上のAOR、ブラック・コンテンポラリーが紹介され、そういった類のガイド本の中ではいまだに誰も到達できない孤高の金字塔だと個人的には思っています。
本の中でアルバムが入手出来る店として紹介されてるのは、
パイドパイパーハウス(青山)
シスコ(新宿)
ウィナーズ(六本木)
懐かしいですね。
中古で安く(1円!)手に入るので、AOR・ブラコン好きで未読の方はぜひ。