東西南北を理解する | 多文化子ども・若者日本語教室

多文化子ども・若者日本語教室

東京都福生市にある「多文化子ども・若者日本語教室」のブログです。(NPO法人青少年自立援助センター運営)
教室では、外国にルーツを持つ子どもと若者のための日本語学習・教科学習、高校進学サポートなどを実施しています。

私たちの教室には、タイにルーツを持つ中学校3年生の子がいます。

幼少時に日本で過ごし、タイに戻って何年か過ごし、また日本に来た子です。

小さい時に日本で育っているので日本語の会話は問題ありませんが、学校に継続して通えていないからか、学習言語としての日本語がしっかりしていないこと、また一般常識としてこの年齢なら知っているはずの知識が欠けているので、わたしたちスタッフも留意して指導しています。


漢字の授業では、彼女はいま小2レベルの漢字を学習しています。
今までいいペースで進んでいたのですが、先日、「東西南北」の漢字を教えた時に、何度練習しても間違えてしまったり、全然覚えられないので、よく話を聞いてみると、


「ていうか、なんのことだかぜんぜんわかんないんだよね」

という答えが返って来ました。

方角の概念がないので、母国語の翻訳を見ても理解できないのは当然のことです。

成人に日本語を教える際には、このような事例はほとんどなく、母国語を介せばほぼ、理解できるところです。

さあ、こまった。


次の授業の時、方位磁石を見せて、持たせ、「どこにいっても針は北を指す」ことを見せると、「ふーん、おもしろいね」と興味を持ってくれました。


また、教室の友だちも、

「南西の方にずーーーーーっといったら、台湾!私の国ーーー!!みんな元気??」
と手を振ったり、
「朝は絶対こっちから太陽がのぼるよ、だからこっちは東」

と教えてくれたりして、なんとなーく理解の助けになったようです。


それでも、まだピンと来ていない様子でした。

そんな彼女にとって、とてもいい機会となったのが、教室の子どもたちで行った、遠足でした。
先日、この教室の子どもたちは、立川にある「南極・北極科学館」に遠足で訪れました。

わたしは同行しなかったのですが、翌日、子どもたちに「どうだった?」と話を聞いていると、

その女の子が地球儀を指しながら

「この、一番上がね、北極で、一番下が南極!!」とうれしそうに教えてくれました!
「へえー、覚えたんだー。じゃあ、北はどっちなの?」とさらに突っ込んで質問してみると、

「こっちだよー!」と正確に答えられ、南も答えられました。


「世界」の形や自分が今いる位置を理解し、頭の中に地球儀が現れて、こっちが北で反対が南で・・・なんていうふうに、頭の中で整理されて、理解して出てきた言葉だな、というのが伝わりました。

つい数日前に「きた?なにそれ。あっちとこっち、で通じるからいいよ、覚えなくても」なーんて言っていた彼女にとって、すごい進歩だと思います。



もうこれで大丈夫、というレベルではないけれど、これから少しずつ、覚えていってくれたらいいなと思います。

メガネ