日本語を母語としない子どもたちの教科学習は多くの場合、
学校の教科書やワーク等を含め一般的に市販されている学習教材をもとに進められています。
JSLの子どもたちが、それらの市販教材に向き合うとき、
知識面や認知面、情意といった様々な側面で成長過程にある彼らにとって
そこにはいくつもの課題がたちはだかっています。
教材の内容がシンプルであれば良い教材か、
使われている言葉がやさしいものならば良い教材か、
と問えば、それは当然NOなのです。
私たちスタッフは、日々子どもたちと色々な話をしたり体験を共有したりしながら過ごしています。
そのため、教科学習で理解しにくい抽象的な概念が出現してきたとき、
過去に一緒に経験したエピソードから例をもってきて説明したり、
その子が以前に話してくれたエピソードなどに関連させて説明したりして、
ここにいる私たちだからこそできる説明、を展開して理解を促進したりすることもあります。
しかし、集団で授業をしている以上、その説明がそこにいる誰にとってもわかりやすい説明であるとは限りません。
生まれてから今日まで過ごしてきた環境のなかで、
どれだけのことを見聞きし、経験し、学んできたかという経験は
子どもによって、実にバラバラです。
そして更には、私たちスタッフも、いつもいつまでも彼らと一緒に彼らに寄り添って学習を支えていけるわけではありません。
支援する者や教える者は、いずれ彼らの前から消えていき、
やがて彼らは自分たちのちからで知り、学び、経験を積んで成長していくのです。
そのための足がかりの一つとして、子ども日本語教室に通っているすべての子どもたち、また、
子ども日本語教室に通っていない、日本語を母語としない子どもたちの教科学習をおもう時、
彼らに寄り添って学習を支えてくれる教材が質高く開発され更新されていくことを強く望みます。
そして私たちと子どもたちとの経験が、JSLの子どもたちの教材開発に貢献できればと日々考えています。