大地震だ-26 学校放射線量基準その後 | こどもクリニック四方山話

大地震だ-26 学校放射線量基準その後

 4月20日のBlogで、厚労省の発表した福島県内の学校、幼稚園などでの放射線量に関する「暫定基準」を紹介しました。要旨は、「年間被曝(ひばく)量が20ミリシーベルトを超えないようにし、校庭の放射線量が3.8マイクロシーベルト/時間以上では屋外活動を制限。」というものでした。Blogでは、「一般人の年間被曝の基準は、ICRPの勧告では1ミリシーベルトとされています。今回の基準は“緊急事態収束後”という条件が付いていることを忘れてはいけません。可能であれば、上記の留意事項を参考に、できるだけ被曝量を少なくする方法を考えたいところです。」と解説を付け加えておきました。

 その後、福島県の学校や保護者から「基準値が高すぎる」「子どもの健康に影響があるのではないか」等の不安や不満の声が上がり、そして全国の様々な団体などからも同様の要望が寄せられました。また、内閣官房参与の小佐古氏が、「子どもをそういう目に遭わせたくない」との思いから、年間20ミリシーベルトを基準に決めたことに抗議して辞任しました。
 そのような状況を受けて文科省は5月27日に、福島県内の児童生徒が学校で受ける放射線量に関して「年間1ミリシーベルト以下を目指す」とする目標が示されました。今後、福島県内全ての学校等の校庭の線量を測定し、1.0マイクロシーベルト/時間以上の場合、表面の土を入れ替える費用を国が負担することも合わせて発表されました。

解 説
 大地震だ-24 学校放射線量基準で解説したように、24時間の生活パターンから推測する年間被曝線量です。年間被曝量が1ミリシーベルトを超えないためには、0.16マイクロシーベルト以下ということになります。
 ここで難しいのは、どの場所なのかと、測定する高さです。空間の放射線量のデータは以前から紹介していますが、土壌中の放射線量は空気中のものと必ずしも一致しません。校庭の放射線量は、大気中の放射性物質が雨とともに地表にしみ込み蓄積されるものです。放射線量の測定が、地表、10cm、1mでは、値も意味も異なってしまいます。ということは、空間放射線量は、必ずしもあてにならいということになります。
 あくまでも推測と確認できた情報からの個人的見解ですが、原発からの放射性物質の放出は、地震直後に最も大量だったはずです。もちろんその後も放出は続いている可能性はありますが、広範囲にわたるものではなさそうです。汚染水による地表や海水の汚染は別ですが。
━─━─━─━─━─

放射線モニタリング情報
・全国の放射線モニタリングデータ:文部科学省
・宮城県内の環境放射線モニタリング情報:宮城県
・福島第一原子力発電所事故に係る放射線モニタリング情報:東北大学
━─━─━─━─━─

最後に
 最近の仙台市内の空間放射線量は0.1~0.2マイクロシーベルト/時間なので、年間被曝量は1ミリシーベルトにもなりません。しかし、これはあくまでも空間線量です。県内の一部の地域で空間線量が高い時期があったり、農作物から放射性物質が検出されたり、心配な面があります。現状では、仙台市内に限れば、恐らく問題はないものとと思われますが、断定は出来るものではありません。安全を確認する手だては、多くの場所で測定し、評価が必要と思います。
 漠然とした不安を持つこと無く、信頼すべき測定データや情報を入手して、少しでも不安を軽減するようにしたいものです。

次の記事も参考に!
大地震だ-19 放射性物質への誤解
大地震だ-24 学校放射線量基準

がんばろう!日本