四国四県の超巨木を巡る登山 | 次世代に遺したい自然や史跡

次世代に遺したい自然や史跡

毎年WEB初公開となる無名伝承地や史跡、マイナーな景勝・奇勝を発表。戦争遺跡や鉄道関連、坂本龍馬等の偉人のマイナー伝承地も。学芸員資格を持つ元高知新聞主管講座講師が解説。

登山の楽しみ方は様々あるが、巨木のある山へ登るスタイルもある。

巨木の定義は林野庁では、胸高幹径が3m以上のもの、としているが、「普通の大きさ」の巨木では面白くない。そこで私は去年、胸高幹周が10m以上ある超巨木が登山道沿いや登山口周辺にある山を、四国各県から一座ずつ選出し、探訪・登山した。それは去年、一年限定でNHK松山放送局が、遍路や四国に関する写真を募集していたサイト「とるぽん」に投稿するためでもあった。


 

1]徳島県・鉾杉と犬山(三好市)

旧東祖谷山村大枝は、文治元年(1185)大晦日、安徳帝一行が寒峰峠を越えて祖谷入りして滞在した最初の集落。一鉾杉 行はしばらく滞在し、京上に御所を造営した。帝はそちらに移られたが、潜幸の責任者である平国盛(教経の別名とされる)は大枝の地に、木の成長するが如く、平氏の再興を祈念し、一本の杉を植えた。この杉は後に鉾杉、或いは国盛杉と呼ばれ、徳島県一の巨杉となった。樹高35m、胸高周囲11mを誇る。


 

鉾杉は鉾神社の社殿背後にあるが、神社の御神体は国盛が霊夢により、家臣の佐伯織之を厳島神社に遣わし、拝領してきた鉾。

神社前にある佐伯家は佐伯織之一族子孫で、かつては代々鉾神社の神主を務めていた。

 

鉾杉の上を走る横道が犬山(1072.2m)登山道。登山口には天満神社の案内板が建つ。登山道があるのはその神社までだが、そこがコース唯一の展望所。そこからは尾根を伝って短時間で山頂に到る。

登山コースは→阿波一の巨杉から犬山へ


 

2]愛媛県・玉取山の大桂(四国中央市)
高知県境の猿田峠から北東の大森山~玉取山の大桂 佐々連尾山にかけての縦走路はメジャー山であり、登山者の姿も見かけられるが、峠から南西のマイナー山、玉取山~兵庫山にかけての縦走路も歩き甲斐があり、二座共前述のメジャー山より展望が良い。稜線にはツツジやシャクナゲも咲く。

 

その玉取山の愛媛県側の最短登山コース登山口に到る林道の三叉路近くに、愛媛県の天然記念物に指定されている「玉取山の大桂」がある。樹齢500年以上、樹高38m、胸高幹周15m


 

昔、山の麓の上猿田に仲のいい姉妹が暮らしていた。ある日、姉妹がこの大桂の近くの粟を刈っていたところ、誤って互いの首を切り落としてしまった。後日、両親が供養のため、この桂を植えたという。

登山コースは→玉取山~兵庫山縦走


 

3]香川県・志々島の大楠と遠見の辻(三豊市)

詫間港の沖合5.5kmに浮かぶ周囲3.4kmの志々島は、昭和前期までは漁業で栄え、最盛期には一千人を超す人口を志々島の大楠 誇っていた。しかし現在では僅か二十数人になっている。が、近年は瀬戸内国際芸術祭が開催される粟島等と航路で結ばれていることもあり、観光客が増えてきた。

この島には讃岐百景の一つ「志々島の大楠」がある。樹高22.5m、幹周12mの規模だが、枝が縦横に張り出し、その枝自体が大木化しており、まるで巨大蛸のような威容を誇る。


 

その昔、一人の武士が追手に追われ、この楠まで逃げてきたところで包囲された。武士は楠に「どうか我を助け給え」と祈念すると、楠の幹が開いて武士を包み込んだ。以来、武士の魂が宿った霊木になったという。

明治期、この木にいたずらをした子供の母親や枝を伐採しようとした漁師は原因不明の熱病に侵されている。


 

この大楠へ向かう遊歩道の途中から、島の最高峰・遠見の辻(109.1m・山名板を建てた地元の者は山名と地名を勘違いして「横尾の辻」と表記している)への登山道が分岐している。山頂からは備後灘から瀬戸内海の大パノラマが広がる。

ハイキング・コースは→志々島の最高峰とシネマツーリズム
 

4]高知県・段ノ谷山の大杉(室戸市)

世界ジオパークに登録されている「室戸ジオパーク」は岬段ノ谷山の大杉 や海岸のみが注目されるが、内陸部の山地にもジオパーク指定地域がある。その一つが野根山街道から下に広がる国有林の段ノ谷山(林野名)である。この林野の特異な所は、登山道沿いに30本以上の巨木や大木がある点。その全てに地元小学生が描いた看板が設置されている。

中でも最大の大杉は当方が知る限りでは四国第三位の大きさの杉で、樹高35m、幹周12m。この木も現地で見るとそのサイズより大きく感じられる。


 

因みに四国一の杉は有名な大豊町の「杉の大杉」。第二位は馬路村の傘杉のはずだが、地元の者も昭和末以降、この木の所在を確認しておらず(山師全員に確認した訳ではないが)、山林管理者である森林管理署も所在は把握していない。当方も去年探訪時、発見できなかった

 

段ノ谷山から街道に上がり、野根山に登頂後、中岡慎太郎も宿泊した岩佐峠から下山する回遊コースもある。

登山コースは→野根山から全山巨木山へ


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