一年にわたって行われる第三期天鳳名人戦も
8節28戦が終わり、決勝初日である9節を迎えた。
決勝初日の時点でのポイントは
石橋伸洋 +467.2
福地 誠 +286.7
小林 剛 +256.1
多井隆晴 △20.0
石橋・福地は2回目、私は3回目。
多井は初めての決勝であるがその勝ち上がり方がすごかった。
8節が抜け番だった多井は、厳しい条件がかかった7節に大勝し、
さらに8節の渋川の成績次第だったのだが、わずかに上回ったのだ。
大きく勝たなければいけない状況でホントに勝つというのは、
実はかなり難しいことで、大抵は大暴れして傷を広げて終わるものだ。
それが、前回の第二期名人戦5節に続いての、崖っぷちでの大勝。
今回のメンツの中でも、多くの条件戦をクリアしてきた多井ならでは
だろうか。ポイントは離れているが、直接対決の決勝に残れば
まだチャンスはある。
残りは8戦。4着の順位点が大きいこの名人戦ルール。
石橋の4着が2回以内なら石橋の優勝、
3回ならば福地小林にもチャンスあり
4回以上ならば全員に可能性があるだろう。
この直接対決の9節からは、いよいよ露骨な石橋潰しが始まった。
1回戦南2局。
多井73500、小林23900、石橋11500、福地11100
この点棒状況ならばと、多井は福地に赤を鳴かせ、
さらに差し込んだのである。
2千点とはいえ、残り8半荘この打ち方をしていけば
他3者の優勝確率が上がっていくのは間違いない。
この節は結局多井が大勝。ただ、石橋の点数を減らすことはできず
石橋大量リードで最終10節を迎えることになった。
石橋 +486.3
福地 +230.9
小林 +191.2
多井 +81.6
ついに最後の4半荘。
気づけば多井に迫られていたが、目標は石橋のみ。
離れているように見えるが、小林1123、石橋2244
程度の着順でも、350ポイントくらいで並ぶ計算である。
このポイント状況で、トータルトップの石橋の打ち方は、
ラスだけは避けるように手堅く・・・
ではなかった!!
狙われているからこそ強く前に出るのである。石橋が出てくれば
他3者は見逃しもしにくいし、石橋に対して甘い牌も打てない。
逆に堅く打つほうが相手の思うツボで、好き放題やられてしまうのだ。
2回戦東2局。多井の切りリーチを受けた石橋。
さらにこのままと無スジを並べ、ホンイツのテンパイまで
こぎつけたのである。
彼の持論である
「アガリに向かうときは、リーチがかかっていても
次の攻撃に備えて危険牌から処理する。」
を実行しただけなのだが、このポイント状況で、大勢の観戦者の
前で堂々とできるのはスゴイ。
続いて3回戦東4局。
小林の親リーチを受けた石橋の手牌
一発目だが、それも構わずに危険牌の切り!
こんな手で親リーチに押せるとは、なんという胆力だろうか。
「ロン。」
ドラ 裏
しかし今回は大失敗。
小林からはビックリの、出場所最高の12000点。
このままトップラスの並びで終われば、二人並んでの最終戦となる。
その並びを作れるかどうか、最後の関門が南3局。
石橋のリーチを受けてこの手だった。
が4枚切れていて、1枚切れの待ち。
これ以上ない絶好のタンキ待ちである。
しかしこのドラ表示牌のはあまりに厳しい。
4枚めというのも考えればカンチャンや両面の大本命の牌であり
ドラよりも危ないかもしれない。
もしを止めてを切れば、こちらは役なしに。
ただ、ここで満貫クラスを放銃すると最終戦は消化試合に。。。
大長考の末、私が切ったのはだった。
結果は以下の通り。
は石橋に通り、待ちを維持していればすぐにツモっていた。
石橋は2着まで浮上し、かなり石橋有利の最終戦となった。
最終戦開始時
石橋 +423.3
小林 +311.3
福地 +193.2
多井 +62.2
それぞれの差は120ほどで、着順アップのためにはひとつ上の
人とのトップ-ラス、もしくは点差をつけた2着-ラスが必要だ。
優勝の可能性がなくなった多井と福地は、ひとつでも上を
狙ってくるだろう。
トップラス条件をクリアするには、普通は見逃しての直撃などを
考えるかもしれないが、そんなにうまくいくとは限らない。
相手もそれだけを避けるべく知恵を絞ってくるのだ。
東2局、福地の親リーチに対する石橋。
このをチーして、手詰まり風の小林に海底牌を回し
放銃を誘う。
それに対して同巡の小林。
多井の切ったをポンして、リーチ福地に海底牌を回したのだ。
その意図は、現状3着めの4000オールくらいをツモアガってもらい
石橋を離れたラスめに落とすこと。
普通トップを取るためには半荘内で1~2万点くらいアガるのもの
だが、直撃ばかりを狙ってそれを達成するのはかなり難しい。
ところが、福地と多井がある程度点棒を持っている状況であれば、
私のアガり方に難しい条件がつくことはなく、福地をまくりさえすれば
ほぼ優勝となるのだ。
そんなわけで、優勝を争う二人がかりで親リーチに海底を回す
という珍しい事件が完成したのだ。
結果は流局だったが、石橋もさぞ驚いたことだろう。
その後はチャンス手を潰しあう展開が続き、南3局
石橋最後の親を迎えた。点数状況は
多井 31800
石橋 30700
小林 29300
福地 28200
問題なのは石橋と福地の点差、2500点。
石橋から2600をアガるか、3000-6000をツモって石橋に
親かぶりさせれば、小林優勝の並びとなってオーラスになるのだ。
思えば昨年もそうだった。、一年間やってきて、ラス前に
わずか数千点差になっているとは。
やはり全員がやるべきことをやっていると、優勝はなかなか
決まらないものである。
そして最後の勝負。
福地のアンカン、ドラ3枚の石橋の仕掛け、そして私のリーチ。
私の手はツモか石橋直撃条件だが、待ちのタンキは
なんと山に3枚残り!しかもは4枚切れで、
石橋の勝負手を考えると、掴めば直撃も十分期待できる。
ツモって裏なしならマンガンだが、それでオーラスは1000点
直撃条件になれば十分だ。
結果は、同巡にテンパイが入った福地が石橋にで放銃!
これが11600では勝負あり。
私には一度もツモ番が回ってこなかった。
石橋と福地の差が25000となれば、石橋をラスにするためには
役満直撃条件。
事実上、石橋の優勝が決定した瞬間である。
第三期天鳳名人戦 最終成績
1 483.6 13.43 36 9/14/ 8/ 5 2.25 Ⓟ石橋伸洋
2 306.6 8.52 36 11/ 9/ 9/ 7 2.33 Ⓟ小林剛
3 117.1 3.25 36 10/ 9/ 9/ 8 2.42 Ⓢ福地誠
4 82.7 2.30 36 9/ 6/13/ 8 2.56 Ⓟ多井隆晴
5 -64.9 -2.32 28 6/10/ 4/ 8 2.50 Ⓟ渋川難波
6 -361.9 -12.92 28 5/ 6/ 8/ 9 2.75 びりびり☆ビリー
7 -186.9 -9.35 20 5/ 6/ 1/ 8 2.60 独歩
8 -376.3 -18.81 20 5/ 0/ 8/ 7 2.85 ASAPIN
結果はこの通り。最初に大きなマイナスを背負ってしまった
ビリー、独歩、ASAPINの3人は本来の実力を出し切れなかったが、
一年間厳しい対局をやらせてもらい、個人的には楽しくもあり
勉強もさせてもらった。
また、自戦解説番組を持たせてもらったというのも、麻雀プロとして
ありがたい限り。来期もできれば毎節続けていきたい。
http://www.threearrows-ch.com/work/kobago-kentou/
一期は順位点が違うので、あくまで参考記録だが
一~三期の通算記録を調べてみた。
小林 +1130.6 108 32/29/31/16 2.29
石橋 +1030.6 100 29/29/24/18 2.31
ほぼ同点といえるだろうか。
石橋と初めて会ったのは、10年前にネット麻雀のオフ会にて。
その時幹事をやっていた人の良さそうな青年と、こんな大舞台で
競うことになるなんて、不思議な縁だなあ。
第四期天鳳名人戦の開催も決定した。
鳳凰卓予選もまもなく始まる。
また出場させてもらえることになったので、みなさん見てくださいね!