第3回詩のボクシング徳島大会で朗読した詩の原稿。 | あっ! 小悪魔だ!

第3回詩のボクシング徳島大会で朗読した詩の原稿。

 もうずいぶん以前に大会は終了しましたが、詩のボクシング第3回徳島大会の予選で、私が朗読した詩を特別に掲載しておきますです、はい。



 暦の上では秋だというのに、蒸し暑い、夜
 あまりにも寝苦しく、少しおなかも空いてきたこともあり、僕は、散歩を兼ねて、近くのコンビニへ買い物に行くことにした。
 草木も眠る丑三つ時。
 通りには僕以外に歩く人の姿はなく、日中は渋滞も珍しくはない片道三車線の道路にも、通る車は数台程度。
 足下を照らす街灯が、さらに寂しさを演出してくれている。
 なま暖かい風が、ゆるやかに吹き抜けていく。

 その場所だけが遠くからでも解るほど不自然に明るいコンビニの店内に入ると、すっかり顔なじみになっている店員の女性が、カウンターで、たいくつそうにしている。
 客は、僕以外にいない。こんな時間なんだ、客がいることのほうが珍しいのかも知れない、そんなことを想いながら、僕は何を食べようか、何を飲もうかと、店内に陳列されている商品を、ゆっくりと物色しはじめた。
 と。
 どこからともなく、鈴虫の鳴き声が聞こえてくる。
 店内に流れている音楽よりも、鈴虫の声のほうが、はっきりと聞こえる。数は、1匹。
 どこから聞こえるのだろう。鈴虫は、どこにいるのだろうか。僕は、その、鳴いている鈴虫が、どこにいるのか、気になってしかたがない。
 ポテトチップスなどのスナック菓子やカップ麺などを選びながら、その鈴虫がどこで鳴いているのか、僕は、耳を澄ませて探し続けた。が、どこで鳴いているのか、よく解らない。
 そうやって店内をうろうろしているうち、どうやら、鈴虫は、カウンターのほうでいるらしいと思った。
 しかし、カウンターのほうに目をやると、鈴虫がいるような形跡はない。虫かごも見あたらない。どこにいるのだろうか。
 いくつか選んだ商品をカウンターに持っていき、僕より少し年上くらいの女性の店員に精算をすませてもらったあと、僕は、おもいきって、その女性に聞いてみることにした。
「鈴虫、飼っているの?」
 すると、その店員は、すました顔をして、僕にこう告げた。
「水虫も飼ってるわよ」