【望遠郷】陸奥新報リレーコラム10月掲載されました! | knock's kitchen   旅する青森出身料理家横山久美子の料理教室と仕事

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食べ物が大好きで12か国滞在してきた
旅する料理家Knock横山久美子
おにぎりからおかしまで幅広く手掛ける料理教室とお仕事について

 

 

 


ご報告遅れましたが、

 

 

 

陸奥新報コラム掲載されました。
 
 
今月は郷土料理のけの汁について書きました。
 
 
大好きな祖母とけの汁の話です。
 
 
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クリックすると拡大できるかな?
 
見辛くてすみません💦
 
 
どうぞよろしくお願いいたします。★写真では見づらいとお声を頂戴しましたので全文コピペしております。ご興味ある方はどうぞ!
 
 

 

 

鍋いっぱいのけの汁

東京では味わえないものにけの汁があります。
けの汁とは賽の目に刻んだ大根、人参、ごぼう、こんにゃく、油揚げ、わらび、ゼンマイなどの野菜を煮込んで最後にすり鉢ですった大豆(ずだ)を加えて煮込む津軽地方おなじみの郷土料理です。
お正月や行事事の人が集まる時に祖母がよく作っていて手伝ったことを思い出します。
元々けの汁の由来は日頃家事をするお母さんがお正月ぐらいは楽をできるようにと大鍋でたっぷり作る栄養たっぷりの食べ物。
とても手の込んだ料理で、野菜は賽の目に全部揃えて切り、大きなすり鉢を足で固定し、一晩水を吸わせた(ずだ)をゴリゴリ、ゴリゴリひたすら潰します。出来上がりの見た目はあまりに素朴ですがしみじみ美味しい料理です。
部屋の傍らにあるオイルストーブには小豆を入れた鍋がことこと音をたてて、甘い匂いがいっぱいに広がった中、まだ潰すの?もういい?
なんて聞きながら手伝っていました。
祖母の住む本家は大人数でそれはそれは大量にけの汁を作っていました。
祖母は気前がよくて、「いっぱい作ったら、腹いっぱいかへるはんで。(おなかいっぱい食べさせるからね。)」と言って沢山のけの汁をくれて、毎日毎日食べても減らないけの汁に辟易したこともあります。また祖母はなにかしら失敗して思惑通りにならないことが多く、愛嬌があって可愛らしいのです。けの汁はなぜか少しだけ作っても美味しくなくて、鍋いっぱいに作ると美味しい不思議な食べ物です。
久々にけの汁を東京で作る機会を得て作ったとき、どんな反応があるのかドキドキしましたが結果は鍋が空になるまでお代りしてもらってとても嬉しかったことを思い出します。
そんな気前の良かった祖母の性格は娘の母にしっかりと引き継がれ、ソフトボールのような大きなおにぎりを伝わって私に引き継がれました。
私が食べ物を作るときに湧き上がる、沢山作るからお腹いっぱい食べてね、という気持ちは祖母からきていると思います。今もけの汁を作るたびににこにこ支度をする祖母とすり鉢を思い出すのです。