日本語訳版 「Japan Times 中田ヤスタカインタビュー」 | Perfumeとグルメの日記

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先日JAPAN TIMESに載っていた中田ヤスタカインタビュー(http://search.japantimes.co.jp/cgi-bin/fm20110603r1.html)を英語の先生をしているお友達に頼んで和訳してもらいました。
彼曰わく、訳しにくい文章だったらしいですが、ほぼ正確に訳せたとの事です。
なお、今回の震災に触れている所は割愛いたしました。
それではお読みください。





「10年に及ぶ細かな曲作りでcapsuleは黄金期を迎える
Perfumeのプロデューサー中田ヤスタカ,曲作りのインスピレーションは80年代のCM音楽から」




「僕は一つのJ-POPグループとしてcapsuleを見てますが、また同時に、僕はJ-POPがそれ自身のルールである特定のジャンルにはめ込まれるべきではないと思ってます」と、Perfumeというセンセーショナルなアイドルのプロデューサーでもあり、エレクトロユニットcapsuleも手がける中田ヤスタカは言う。


「『J-POP音楽』を生み出そうとするプロのプロデューサーたちがいますが、本当は、日本で作られるどんなPOP音楽もJ-POPとして考えられるべきなんです。」


彼らの12枚目のオリジナルアルバム「World of Fantasy」を5月25日にリリースした中田ヤスタカとcapsuleのボーカリストこしじまとしこは、この10年の間、彼らの特定のJ-POPの形の音楽に磨きをかけ、価値ある様々な楽曲をリリースしてきた。


それは2001年にシングル「SAKURA」というポスト渋谷系のジャポニカ・テクノポップに始まり、今回のアルバムの容赦なく打ち付けるような128BPMのビートにおいて今や最盛期を迎えた。しかしながら、そのような厳しいリズムの限界に彼自身を制約することに決めたことについて、彼はただ笑うだけだ。


「それは何か壮大なコンセプトっていうよりも、一つのゲームみたいなものでしたね。」彼はそう説明する。「子供の頃、どれくらい長い間息を止めていられるか見てみたい気持ちっていうか、そんな感じでした。」


capsuleのLIVEパフォーマンスも中田ヤスタカのDJパーティもめったに見れないこともあって(?)、特にShibuya Club Asia and DailanyamaでのレギュラーDJとしての出演が彼のスケジュールを支配している。


彼は元々、そして今でもメインで、プロジェクトの新しい素材はまず「クラブありき」の方向性でありその傾向はますます強くなっていることは、特に驚くべきことではないのだが、彼はその状況はそれほど単純なものではないと主張している。


「すべての楽曲がクラブやDJをすることに必要なわけではないんです」と彼は言う。「つまり、同じBPMの曲でも、アレンジによっては、もっと速くしたり遅くしたりしたほうがいい曲もいくつかあるんですよね。」


タイトル曲("World of Fantasy")とレトロシンセ・ディスコな"Keep Hole Alive"に見られるような、明らかに1980年代の影響を受けている中にも、特にオランダ系のハウス音楽を彷彿とさせる、より攻撃的で、より現代的なサウンドが今回のアルバムを埋め尽くしている。


しかし、中田ヤスタカは、Giorgio Moroderや、あるいはkosmischeから受けた明らかな影響を引き合いに出す代わりに、彼の音楽の要素となったルーツとしての、彼自身の子供時代からのサウンドを語った。




「僕は1980年に生まれました。80年代にはこういうすごいシンセサイザーの音を使った家庭用品のTVコマーシャルがあったんですよ。だから僕はその頃の記憶から曲の音を引き出しているのかも知れません。」


彼はまた、現在興味があり、触発されている音楽として、ヨーロッパやアジアのクラッシック音楽や民族音楽の種類を例に挙げている。


ここ2、3数年に中田ヤスタカのDJを見たことがある人なら恐らくは誰もが、彼がよくプレーする、Carl Orffの"Carrmina Burana"の中の"O Fortuna"を大げさに尖らせたエレクトロ・ミックスに気づくだろう。


しかし、中田ヤスタカの興味は音楽の構造についてのさらに一般的な観察をも含んでいる。「エレクトロ音楽が昔の民族音楽から学べることはたくさんある」と彼は信じているのだ。


「基本的に、どちらの音楽もリズムと踊りに基づいているでしょ。だから、民族音楽のいろんな側面はエレクトロ音楽のプロデューサーには役に立つし、面白いんですよね。」


さらに、彼にとって面白い音楽というのは、何か異質なものがある、と感じているようだ。「僕は周囲の環境を感じさせてくれるような音楽が好きなんです。音楽が作られたいろんな時代や文化の異国情緒は、僕にとって魅力あるものなんですよ。」


ある意味、この話は、中田ヤスタカがcapsuleをどのようなものだと思っているのか、ということの核心部分にまで少し触れる話である。


(都合により、中略)


「前のタイトル("Killer Wave")は最初はかなり抽象的なイメージだったんです」と中田氏は語る。「"World of Fantasy"というタイトルは必ずしも今回の震災への直接的な答えではなかったんだけど、capsuleの音楽がどういうものなのかを定義付ける何かではあったと思うんです。」


「それは『逃避主義』というか、capsuleの音楽を聞いた人が別の世界に入り込んで、抱えてる仕事や心配事なんかを忘れてしまうようなそんな音楽。一人のアーティストでは全てのことはできないけど、僕は逃避主義につながる音楽を作ることができるし、もっと現実的な、もっとしっかりしたコンセプトで音楽を作れる人たちもいる。」


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だが、ボーカリストこしじまとしこの声を音楽の中に、よりさらに統合させることで、どういうものがcapsuleなのか、という中田ヤスタカ自身のコンセプトは、より強固なものとなった。それは、アルバム"More! More! More!(2008年)"を経て、彼らの前作のアルバム"Player(2010年)"で一つの最高点に達した。


「ある意味、今回のアルバム("World of Fantasy")で、capsuleでやるべきだと思ってたことが完成したような気がする」と彼は説明する。「以前は、capsuleのアルバムって、としこが歌うための曲が半分あって、僕自身のソロの音源(楽曲)が半分あったけど、今回のアルバムでは、としこの曲のプロデュースをするというより、むしろ僕たちペアがようやくデュオとして成立していると思う。」


2010年にリリースした"Player"と比べると、契約による楽曲作成やプロデュースのプロセスにも、この変化が見られるように思われる。


「"Player"では、アルバム作成を始める前からすでに、多くの楽曲が出来上がっていたんですよ。映画『Liar Game』のための曲も作ってたし、CMや他にもいろいろと作ってたので…、だから"World of Fantasy"のようなアルバムを作り上げるのは難しかったですね。」と彼は説明する。


前作までとの最も大きな違いは、このアルバム"World of Fantasy"の楽曲は全て、capsuleのために作られたcapsule自身の音楽だということだ。Perfumeのために作られた楽曲ではないし、すでにそこにあった何かでもなく、ただただcapsuleのためだけの楽曲なのだ。


このアルバムは、彼が今まで作ってきた多くのメジャーな楽曲に見られるような軽いサウンドとは全く対照的だ。


ビートやループや繰り返しが強調されているので、恐らく、Perfumeの楽曲を作ったプロデューサーという視点で中田ヤスタカを見ているような、軽いノリのファンやオタク系たちには受け入れられないだろう。


中田も彼らのポップス中心のコンピレーション"Flash Best(2009年)"を通して、こしじまとしこと二人で獲得してきたファン層が離れてしまうかもしれないことに気づいているようだ。


彼も「多分、それほど音楽を聞かない人たちや、軽い気持ちで聞いてるリスナーにとっては、"Player"のほうが歌モノが多かったと思うでしょうね」と認めている。しかし、その2つの(歌モノ中心と音楽重視の)プロジェクトを差別化する必要性はどうしても必要だったのだ。


「以前は、capsuleを実験する場として使って、そこで得たものをPerfumeに使っていくってことをよくやってました」と中田は語る。


「capsuleのためにたくさん曲を書いてから、『あぁ、これはPerfumeに使えるな』っていう選択肢があった。でも今回のアルバムではcapsuleにしか作れないことだけを考えて作ってきました。小さな部分やフレーズは(Perfume用に)移しかえることができたとしても、もう一曲丸ごと移しかえるようなことはできないんです。」


そのようなcapsuleの楽曲の変化は、今やJ-POPのメインストリームで確固たる地位を築き上げたPerfumeにCM活動が増えてきたことに関連して、それに見合うような非音楽的な音源作成を求められてきたことにも、ある程度の影響を受けているように思われる。


「たとえcapsuleとPerfumeの間で楽曲を移しかえるとしても、ミックスダウンの段階で、両者の楽曲を全く異なるレベルで使うようになりましたね」と彼は言う。


「Perfumeの場合は楽曲を作り始める前から、すでにCMとの契約をしているので、一つのアイデア、つまり、目立つフックとしての音源を使うことだけを考えればいい。それに対して、capsuleの音楽は、より複雑で、聞くたびに毎回新しい音の発見ができたり、聞く人が違えば違った聞こえ方をする、それが分かるのが楽しいんですよね。」


また、特筆すべきなのは、最近のPerfumeの楽曲に使われている音源がcapsuleの音楽のごく初期のものに遡ってきていることだろう。


"Popcorn"の頃のスタイルのピコピコしたテクノサウンドのシンセの旋律があったり、最新シングル"レーザービーム"のはっきりとしたオリエンタル(東洋的)なメロディーラインは、2001年にcapsuleが"SAKURA"で演奏していたスタイルを思い出させる。そこには、1960年代~70年代の古い日本のポップミュージックのメロディーの影響が感じられるのは言うまでもない。


だが再び、中田ヤスタカはこの提案にも笑いながら、こう答えるのだった。「いや、むしろ、それよりももっとさかのぼりますよ。これは、あまりメディアでは言ってないことなんだけど、僕にとっては『レーザービーム』は盆踊りの音楽、つまり、夏祭り用の音楽なんですよ。」


この点において、中田ヤスタカの様々なスタイルの楽曲が一つに集約されるように思える可能性がまだ残っていることになる。それは、後に彼がcapsuleの音楽とは一体何だったのかを総括し、まとめる際に戻るところなのだろう。


彼は最後にこう締めくくった。「(僕の作る音楽は、)ただの祭りのための音楽なんですよ。今日(今を楽しむ)だけのものなんです。すべてを忘れ(て歌い踊り)ましょう。」









いかがでしたか?
Perfumeの「レーザービーム」について、盆踊りのように作ったという部分をどう解釈されましたか?
良く言えば、「capsuleの新作でやったように民族音楽のテイストを加えた」と取れるし、悪く言えば、「盆踊りレベルまで下げなければ曲を理解できない」リスナー向けに作ったとも取れちゃうんですよね(笑)。


それはいいとして、中田ヤスタカの曲作りのポリシーは以前のインタビューの内容と同じだし、更に彼の現在の音楽嗜好も明らかになるなど有意義なインタビューだったと思います。