『砂時計』に見る韓国現代史② | コワれるまで ALLORA

『砂時計』に見る韓国現代史②

矢印①から

1970年代、パク・チョンヒ(朴正煕)軍事政権は大学生の反政府デモを、“対共産主義”の体制固めのために厳しく弾圧しました。

私が何気なく見てきた韓国ドラマの中には、そんな時代のシーンがいくつも出ていました。

ドラマ 『製パン王キム・タック』(baker king kim tak goo)(2010年)の学生運動家シン・ユギョン(ユジン)は、バルボンベーカリーにタックを訪ねたところで警察に捕まってしまいました。
キム・タック
タックが刑事を殴ってしまうシーンや、拘留中のユギョンに聞こえるように留置場の外からタックが「パッヘルベルのカノン」を聞かせるシーン、その後の別れの約束のシーン・・・全部泣けますビックリマーク

映画 ヒノキの葉 『夏物語』 (原題:その年の夏 200(Once in A Summer)7年)では、大学生ソギョン(イ・ビョンホン)と上京したジョンイン(スエ)の2人が学生運動に巻き込まれて、警官隊に捕まります。
夏物語 Once in a Summer
その後の厳しい取り調べを経て、2人の仲は引き裂かれることに・・・

ドラマ ラブレイン(Love Rain)(2012年)の《70年代の部》で、友人チャンモ(ソ・イングク)の学生運動のとばっちりを受けて逮捕されるソ・イナ(チャン・グンソク)。
ラブレイン
70年代のキム・ユニを演じた少女時代(So Nyuh Shi Dae(ソニョ シデSNSD))のユナはホントに清楚でしたね~ラブラブ


そして 砂時計 『砂時計』 (모래시계(モレシゲ) 1995年)

富豪の娘でありながら学生運動に身を投じ続けるユン・ヘリン(コ・ヒョンジョン)。
砂時計
ひなびた漁村に逃亡したものの「大学生がいる」と通報され、それだけの理由だけで警察に逮捕される。

当時の韓国では 《 大学生=アカ(共産主義)=北朝鮮スパイ 》 という強引な理由付けによる弾圧が強行されていたようです。

これまで韓流コンテンツを観てきましたが、公権力に怯える学生たちの姿にはそんなに現実感を感じませんでした。

でも『砂時計』は、その時代背景をじっくり映し出しているので、よく分かります・・・う~ん、それでも“分かる”なんて軽々しく言えないですけど、少なくとも史実の重さを実感できる、そんなドラマだと思います。


隣国 韓国を理解するためには、絶対に観ておくべき作品でしょう。
(※ 本作では見られませんが、パク・チョンヒ大統領は内政面ではともかく、経済政策とりわけ外交の面では評価が低くない政治家です)



      砂時計      砂時計      砂時計


チョンヒ政権の弾圧運動に荷担して勢力を伸ばしたのが、主人公パク・テス(チェ・ミンス)。
一番羽振りのいいときに、足を洗った子分の店の開店祝いに光州市(クァンジュ ))を訪れます。

そこで、韓国で封印された史実である「光州事(クァンジュ)件(光州民主化運動)」(1980年)に巻き込まれることになります。

この事件を第6話から第7話にかけて、実写を交えた映像で観ると、これはもう弾圧なんてものじゃないと感じます。

戦争です。
市民と政府軍の戦争です。

軍事政府は人口75万の光州市に、2万人もの兵力を動じたのです。

そしてこの大虐殺の事実は、光州市の外には知らされず長い間 報道規制が敷かれてきたのでした。


80年代というと私も社会人でした。
日本はバブル前の円高・低成長機ではありましたが、パソコンが台頭し、明日は今日よりもよくなると信じられた、平和な国でした。

でも隣国は、軍事政権の圧政の下で市民が闘っていたのです。

今、なにかにつけて過激なプラカードや反旗を掲げてデモをする姿が見られる韓国ですが、それは韓国人の気質とか言うだけではなく、彼らにとっては、繰り返し続けてきた抗議活動の1ページに過ぎないのではないでしうか。

韓国はちょっと前まで激しい民主化運動を体験してきた人たちが、たくさんいるのです。



      砂時計      砂時計      砂時計


闘いを忘れていない国。

敗戦以降、闘いを忘れた国。



ドラマ『砂時計』は、隣国の理解が全く不十分だった私にパンチを与えてくれた、重厚なドラマでした。