なんでも買う足し算生活はやめにして久しい。あるものでなんとかする。洋服や靴なんかもどうせ消耗品ですりきれたらお終いだ。穴が空いたら捨ててきた。昔の人のように繕いで着るというこはしない。わたしの買ったものは安物ばかりで、それも10年以上着ていたりするしたから、惜しくもない。服としては十分すぎるほど活用してきものばかり。
 ここのところは毎日、どんどんと捨てる引き算生活をしている。モノが部屋からなくなって行くのは嬉しい。引っ越し荷物を減らすのは、いましかない。こういうときに思い切って処分する。
 粗大ゴミとして桐のタンス二つと破れた布団を出した。朝8時までに出してと申し込んだら言われたので、回収日を予約しておいて、リサイクル券を近くのコンビニから買う。それが、筋向いのセブンイレブンでは台東区のしかないと断られる。もう少し離れたコンビニでも荒川区のしかない。その区のものしかないのだ。いま住んでいる住所が境界線で、向いは台東区で少し歩けば北区と荒川区、いまいるところは文京区で道路ひとつ挟んで区が違う。それで遠いコンビニまで歩いて行って、そこでタンスひとつ千円と布団200円の処分料の券を購入して、現物に貼りつけて出す。朝から二人で汗かいてダンスと布団を出した。

 部屋にあった本は前の仕事場のマンションから少しずつもらってきたものだが、それも谷中のだんだんの古本屋に持ち込む。たいしたものはないが、500円になる。それだけあれば缶酎ハイが4本買える。随分といままでも持ち込んで、若い夫婦の古本屋には世話になった。これが最後の買取だ。
 ついでにそこから近い日暮里の駅に行って、通勤定期の残額はないが、解約して500円を受け取る。1年4か月使ってすり切れた定期券もなくなる。駅のコンビニはコピーが安い。白黒が5円でカラーコピーが30円だ。そこで二人のパスポートをコピーした。コピーも荷物と一緒に持って行く。パスポートを紛失したときは、カラーコピーが残っていれば手続きが早い。用心のためもある。
 駅前のスーパーも覗く。買うものといったら、その日その日の食料ぐらいで、できるだけあるもので食べている。冷蔵庫も後二日で空にしなければならない。最後はスーパーの弁当だろうか。
 ドラッグストアで目薬が切れたので日常使う常備薬なども買う。それも海外で買ってもいいが、日本製が一番だろう。それに効能書が読めない。風邪薬や下剤、胃薬などはあるものをスーツケースに詰める。できるだけ買わないようにはする。

 部屋にわたしの荷物は少ない。連れのばかりだが、それも使えるものは青森にトラックで運ぶが、この先も使わないものは思い切って捨てる。食器や台所用品もいくらでもある。それも使い古しは捨ててゆく。機械関係は次々と壊れて、そのたびに捨てた。身軽になるから嬉しい。
 図書館に最後の本と音楽CDを返しにゆく。もう音楽を聴いたり、本を読んでいる暇はない。本駒込図書館と本郷図書館にはこの一年半はお世話になった。もう二度と行くこともないだろう。これが最後と判ると、なんとなく新聞を読んだ椅子席を振り返って見ていた。

 ケータイ電話も青森に帰ったら、もう使わないので解約し電話機は売ろう。みんなの電話番号だけは帰国したときにスマホに変えたらまた電話帳登録しないといけないので、パソコンにメモしておいた。連れのスマホも解約。機械はワイファイで使えるので持ってゆく。
 電気・ガス・水道にも連絡。月末で止めてもらう。不動産屋は月末に明け渡し立ち会いがあるよう連絡していた。
 郵便局にも寄って、郵便物を青森の古本屋が現住所になっているので、そちらに引っ越し転送の紙に書いて出した。

 いままでも引っ越しは18回もしたので、やることは慣れている。手抜かりないようにリストアップしてそれを消していたが、連れも同じようなことをしていた。
 いままで使っていたノートパソコンからデータをSDカードに保存するものは移しておいた。これから海外で使うタブレツトPCに、新しいブログ『放老生活』と旅の詩『東欧見聞録』のブログの設定と、いつでもアップできるようにしておいた。いままでのブログから移動しなければならない。
 音楽もメディアプレーヤーのライブラリーからいままで録音したアルバムデータをmicroSDカードに拭いておいた。いずれノートパソコンも売るのでデータを保存や消去して空にしなくてはならない。
 
 タンスを出したら部屋が広く見えないのはまだまたモノが溢れているからだ。それと、たったそれだけの作業が疲れた。1年半前にここに引っ越してきたときより体力が二人ともになくなっているのか。
 もうこれで引っ越しすることはないだろう。これが人生最後の引っ越しになるのか。荷物だけの引っ越しで、人だけは引っ越さないという、これからの住まいは旅の上ということなのだ。最低生活に必要最小限の荷物だけスーツケースとバックパック二つずつに詰めた。いよいよかと、連れも間近いに迫ったことになんとなく嬉しさがー。