前夜祭

古本屋のうたた寝、本の音 改め


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 引っ越しの準備なんかワンルームだから二人で一日でできる。それでも音楽を聴いたり、テレビで昼の洋画を見てしまったり、ガイドブックを読んでいたり、昼寝をしたりと、だらだらとやるから、気がついたら一日が終わっていたりする。
 調味料が次々と切れてゆく。あるものでなんとか作るとおかしいことになる。最後の麺がなくなる。小麦粉も最後のものでピザを焼く。ヒザソースもケチャップもない。マヨネーズと青のりと削り節とソースはある。チーズも残り少し。それでなんとか焼いてみた。それって、どこかお好み焼きに近いと、二人して笑う。
 冷蔵庫も空になる。もう野菜の屑も使い果たし、これから買ってはこない。米も二回分はあるか。食材を完璧にゼロにすることはできないが、限りなくゼロに近くするのはひとつのゲームのようで楽しい。あるものでどういう料理ができるのか。

 この千駄木のマンションに引っ越してきたのは去年の1月下旬だった。連れのマンションからものを運ぶのに、引っ越し屋を使うと高くつくので、レンタカーでも安いところから8時間、750kg積載の平トラックを借りてきた。それで4回運んだ。車で同じ文京区で、10分くらいしかかからない距離で、一階から一階だから運びやすかった。二人は力だけはある。連れは感心して、引っ越しというと何十万もかかるのに、こういう方法もあるんだと。費用はたったの8千円くらい。それで運んでしまったのが、少し延長したが、8時には終わっていた。
 2LDKからワンルームへどうして入るのか。それはだいぶ荷物を処分して、減らしてきたからだ。寒い冬のある一日に、われわれは見知らぬ街に来ていた。住めば都で、谷中の商店街も近く、下町は買い物も安く便利で、庶民的なところが親しみやすかった。一年半仮住まいのようにいたので、ドアには表札も出していなかった。隣は土建屋の事務所で、そこも今月末で閉鎖するようで、倒産の後始末中。大方は若い人たちで東大などの学生さんたちが暮らしている。

 連れは思い出の観光パンフを大事にとっていて、それももう一度眺めながら、見たらビリビリと破り捨てていた。思えば、この一年半でも随分と都内から郊外へ、いろんなところに行った。そういう思い返した話をしながら整理している。
 郵便物はどうするか。わたしのは青森に転送させるが、それでもこの先まるで海外移住のように郵便局で不在というより日本にいないので返送してもらう手続きもした。

 あれもいらない、これもいらないと、惜しみなく捨てる。食器は勿体ないのはいつか使うかもしれないと、そういうのはダンボール箱に詰めて、青森に運ぶようにする。捨てる基準は、この先10年以上経っても絶対に使わないものだ。誰かに差し上げてもいいが、それとてどこもモノで溢れている時代だから、いらないだろう。
 よく、引っ越しのときには、ガレージセールを行う。外に出して、値段は言い値で、通行人に売る。通行人や観光客が多いから、それなりに売れるだろうが、恥ずかしいからそれはしたくない。
 ダンボール箱は隣近所のドラッグストアや八百屋からもらってきた。それに衣類などを防虫剤を入れて仕舞う。これからは旅から一旦戻ると、青森の古本屋の倉庫に必要な衣類を取りに行ったりと、季節で使うものもある。

 問題は引っ越しのときの天候だった。刻々と変わるが、雨でなければいい。何日か前になると、曇り時々雨が、曇りになる。日暮里駅前のレンタカー会社の営業所から2tの平トラックを予約していた。ひと月以上も前から予約したのは、トラックは人気だからだ。息子からは、クレジットのETCカードを送ってもらっている。それで高速料金を払えば3割引きになる。ガソリン代と往復の高速代とレンタカー代3日間分で、だいたいマンションの敷金ひと月分の返金で足りる。
 一階だから、運ぶのは楽だが、一番奥の部屋なので、運ぶ距離はある。それでも表まで真っ直ぐだ。階段やエレベーターで上がったり下がったりするよりはいい。タンス二つや布団など大きなものは処分したし、家電も壊れていろいろと捨ててきたから、前の引っ越しでここに来たときよりは荷物は随分と少ない。
 二人で四人前の力はありそうだ。連れも逞しい。火事場ではなく引っ越し場のバカ力を発揮する。トラックに荷物を早朝から積むと、前に買ったシートをかぶせ、ロープで風で飛ばされないように頑丈に縛る。朝、王子のインターから入り、川口より東北自動車道に入ると、夕方6時ころには青森に着くだろう。これが人生最後の引っ越しにしたい。もう、これからはどこに住むというのでもない。流浪の民で、住所不定無職に入るのだから。

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