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 ここに上げたカタカナ語は、いまでは新聞でもどこでも使われている最近は時事用語のようなものもある。手元にある新刊の新書一冊から書き出したものだが、たった一冊の薄い本でも、これだけの横文字が氾濫している。知っている言葉もあるが、知らないで、電子辞書やネットで調べた言葉もある。
 最近は、どうも疲れる。それがあたりまえの世の中になったというのなら、わたしは脱落者だ。なかなか英単語もろくに覚えないのに、新しい言葉を暗記するのに、おさらいしても覚えられないほど、次々に出てくる。

 いまは、英語が読み書き、そして会話ができてあたりまえで、それが特技というと、軽蔑される。誰も習わない珍しい言語を習得したのなら、特技ということもあるが、履歴書には、読書と音楽鑑賞ぐらい平凡な趣味のひとつだろう。
 うちの若いのも、会話の中で平気で横文字を使って、わたしは癪だが、いちいち訊くことにしている。ネットの中の言葉もあれば、若者言葉、ゲームの中で使う横文字であったりする。彼らは、生まれたときからゲームがあり、パソコンは幼稚園からあって、ケータイも中学のときからバンバン使っている。ローマ字打ちがあたりまえで、わたしのようなカナ打ちしかできない親父にとっては、なんら抵抗もなく横文字を受け入れてきた世代なのだ。

 この前、小学一年の孫娘と話していて、英単語を言っていたのが、わたしの知らない単語で、焦って、スマホで調べたほどだ。嫁さんに、どうして知っているのと訊いたら、いまはテレビでも子供向けにやっている。セサミストリートなんか人気番組だ。子供らはすぐに覚える。幼稚園でも教えて、いまは小学校でも英語教育が入ってきている。わたしら昔の人には、教育も環境も違うのだ。
 そういえば、街中のサインも横文字が増えて、商品のラベルも増えた。横文字を知らないと、食品も認識できないし買えない。やたらと洋服でも横文字だらけで、店に入ると何がなんだか判らない。ここは日本かと思うときがある。
 テレビでも新聞でも、当然知っているものとして、横文字を出すし、芸能人も平気で使っている。わたしが知らないと、頭にきて、毎日、辞書で調べているのだ。
 学校で習った単語もすっかりと忘れている。昨日は、通勤途上に、こういうときはどう英語で言うのかと、「怒る」という簡単な動詞を忘れていた。確かAから始まる、アグリーagreeという言葉が出た。立ち止まってスマホで調べたら、同意するということだった。怒るという動詞はないのか。get angryと出た。ダメだ、すっかりと忘れている。うちの女子に訊いたらすぐに答えた。ついこの前まで高校生であったから、覚えているのだ。
 新しい英語どころか、基本的な英語を忘れてしまっている。これではまた中学から入り直しだ。

 高校入試試験が新聞に出る。どれ、どんな問題が出ているかと、眺めて、実際に解いてみるが、半分どころか殆ど判らないものもある。これでは中学生に勉強はとても教えられない。
 うちの息子が高校のときに、宿題を見てやったことがあるが、もう高校になると歯が立たない。よくも、こあういう問題を解けるものだと、息子が大きく見えたものだ。日本史は弱いが、明治の自由民権運動の三人を挙げなさいという問題には、ハテ? 数学の方程式など、???だ。ましてや、英語の問題など、高校レベルになると、親は太刀打ちができない。

 わたしなんかはまだいいほうで、うちのばあさんなどは、敵国語として習わなかったようで、いつも辞書を引いている。この前も、わたしの部屋に来て、「シビリアン・コントロールってなんのことだい」と、訊いてきた。まだ現代についてゆこうという91歳は立派だ。そうでなければ世の中のつんぼ桟敷(これは差別用語と言いながら使っている)になってしまう。ニュースも意味不明、何が起こっているのか、知らないととても不安にはなる。わたしのように、普段は本を読んでいても、毎日のように新しく聴いた言葉を調べるのだが、特に、アイドルなどの可愛らしい女の子が知らない横文字を言えば、悔しくて悔しくて、すぐに調べて、バカにされないように覚える。
 横文字を知らないと、CMも判らない。みんなが笑うところで、可笑しくもない。世の中に取り残されて、いまだ自分だけは鎖国中の江戸時代なんだと、孤独感いっぱいになる。

 外資系の会社だけでなく、大手の会社は社内の会議でも入社式でも英語が公用語だと、そういうところが話題になる。大学も英語で授業をするというところが出て、それにアレルギーのあるわたしなんかは、とてもついてゆけない。
 氾濫している英語をなんとかするためには、もう一度アメリカと戦争をしないといけない。敵国語として使えないようにして、みんな漢字に置き換える。中国はよかった。カタカナがなくて。誰だ、カタカナなんか作ったのは。