祭日であった。しかも吹雪で前が見えない。前日はペンクラブの新年会で、会館に30人が集まり、その半分が二次会に行った。新しく会員にパブのマスターが入ったので、そちらの店に行こうと二手に分かれた。律儀にもわたしは三次会まで付き合う。8時間も呑んで飽きてしまった。
 新年会では、うちの古本を会場に持ち込み、会員に買ってもらう。売上はみんな会に寄付する。たまにそうして在庫処分もしないといけない。箱を置いて、ご協力をと、僅か三時間でも結構売れた。その残った本をダンボール四箱に入れて、ブックオフに後で売りにゆく。
 息子と会館に古本チャリティの本を取りに寄り、それから雪の中、仕入に向う。この日はわたしの休みなのだが、またそんな日に限って仕入がある。県営住宅に住んでいた亡くなった父親の住まいを整理しに娘さんたちが集まっていた。関東のほうから来て、部屋を明け渡すに、本を全部出した。他にないかと、物色したら、絵が出てきた。三枚が地元の有名な画家のものだが、額装していたのをよく見たら、二枚は複製のようだ。もう一枚は本物のような気がした。それで高めで買って、後で店で額から出して見たら、複製でがっかり。
 本を店で降ろすと、わたし一人で買い物に走り回る。ばあさんは風邪で寝ていた。いつもは買い物には同行するのだが、今日はあちこち覗いてみよう。

 まずは、ショッピングセンターに行く。その店に行くのもここ一年ぐらいなかったかもしれない。あまりそういうところには入らない。祭日なのにガランとしている。二階の百円均一で額や事務用品などを買い求めた。そこからホームセンターに行く。以前もらった金券を使おうと思ったのに、よく見たら期限が昨年で切れていた。せっかく来たからと、DVD-RとSDカードを買う。随分と安くなって驚いた。音楽もビデオ映像もすべてこれからはSDカードに保存することにした。DVDは配布用だ。
 市民図書館が曝書で二週間も休みなので、読む本を切らして、それで郊外の県立図書館に行く。ついでに二階の文学館で10人展を見てくる。県内の10人の作家の新たな遺品などの展示がされていて、興味はあった。誰もいない会場を一人ゆっくりと見て歩く。黒石のロシア文学者の鳴海完造の蔵書の一部が展示されている。秋田雨雀と革命後のロシアに入ったのは彼が28歳の昭和2年とある。
 一階の図書館で本を返して、また借りる。新刊は3冊までより借りられない。貸し出しカードもいまでは二枚持っていたが、そのうちの一枚は死んだ親父のもので使えない。書誌の棚から、古本屋に関する新しい本がないかと探した。だいぶ読んでいるが、また入っている。市民図書館とは質も量も違う。やはり県立はいい。だけど、ちょっと遠くて五冊借りるに二日おきに走るのが億劫だ。
 そこから近いところにある温泉にもゆく。休みは必ず温泉を入れる。祭日だから混んでいた。ひのきの風呂はイベント湯で、その日はバレンタインにちなんでチョコレート風呂。ほろ苦い匂いのする少し黒い風呂に浸かったが、どうも汚い感じがする。考えすぎではないか。そのうち、カレー風呂とかカラシメンタイコ風呂とかエスカレートしないだろうか。
 体重はフィリビンから戻ったときから変わらない。インフルエンザで寝ていても太らなかった。
 
 昼時を少し過ぎたが、たまに外食をしてみようと、前に家族で行って美味しかった食堂を思い出した。走るルート沿いにあったので、寄ってみた。何故かおかしい。客は女が一人だけ。それも出てゆくと、広い客席にわたし一人になる。トンコツの辛味ラーメンを頼んで、借りてきた本をさっそく読む。テレビだけが一人で喋っていた。書き入れどきの祭日の昼にこれでは大変だ。美味しいとは思うのに、前のように混んではいない。外食産業も浮き沈みが激しい。
 そこから少し走ったところにある野菜や果物の安いスーパーに行った。ばあさんからりんごを頼まれていた。そこも安いからいつも混んでいたのが、ガランと、レジは暇そうだ。どうしたのか、みんなどこに行ったのか。吹雪だから出ないのだろう。いまは野菜は高い。100円で買えるサラダ菜やニラなど買う。
 そうして、ようやくブックオフへ。久しぶりだ。本を四箱降ろした。何故か客が少ない。売りに来る人も少ないのは冬だからだ。それでいつもは何百円か子供の小遣いぐらいしか貰えないのに、今日は2600円もくれた。嬉しい。それで本をセドリしようとしたが、3冊より買えない。近ごろ、どこもいい本がない。

 最後にやってきたのは、東にあるショッビングセンター。そこも二年以上は来ていない。浅虫にいたときは、よく通りかかるので買い物に寄ったが、暫くぶりのところばかり。食品売り場で、セルフレジを初めて見た。みんな馴れていて、機械を通して自分で袋に入れている。大丈夫なのか、万引きは。機械を通さないとピーと鳴るとか。うちもセルフにしようか。勝手に代金を箱に入れてと。
 酒も買う。店で呑む酒がなくなる。晩酌は仕事中に店でするのだ。値段を見て回るが、いつもゆく安いスーパーよりはどれも10円以上高い。ただ、見たことがないような食品があるから買ってゆく。両手にレジ袋四つは重い。それで駐車場の車までは遠いし、カートは雪で使えない。これだから大きな店は嫌なのだ。

 九時に家を出て、夕方戻ってきた。珍しくあちこち買い物で覗いて歩いた一日であった。ちょっと疲れたとごろん。晩飯まで少し寝る。市内一周も疲れるものだ。活字の世界だけでもよくない。世間を見ないと。地方経済はそんなに好転していない。友人からの電話で、昔の呑み仲間の所有する五階建のビルが差し押さえられたという。競売にかけられて、430万で落札。自宅とアパートも買い手がついたが、彼は居座って家から出ないので困っているとか。そういえば、最近は顔を見ていない。どうしているかな。そういう話ばかりがちらほらと聞こえてくる。いい話のひとつでもあればいいが、いずこも同じ冬の夕暮れだ。じわじわときている。雪解けはいつになることやら。