わたしは、ダニエル・ブレイク

 

貧困である。

いわゆる発展途上の国ではない。

イギリスだ。

文明の国だ。

真っ当に生きてきた人間がある日、貧乏になる。

 

ゆりかごから墓場までと言われたイギリスの社会保障。

その綻びや融通の利かなさ。

IT弱者の切なさ。

そういった、おそらく現実に散見される光景を描写して、深刻。

 

日本も格差社会などと言われるけれど、まだ軽症ではと思えてくる。

公的サービスの仕組みが、こんなに過酷ということはないだろう。

これが英国の現状だとしたら、辛い。

 

 

 

主演のデイヴ・ジョーンズはなんと、映画初出演だとは…!

本来はコメディアンの方と知り、大納得。

何しろ、可笑しみがある。隠しきれない愛嬌だ。すっかりファンに。

 

シングルマザー役のヘイリー・スクワイアーズは、オーディション選抜の逸材。

あどけなさと達観が混在する芝居で、とてもいい。

 

隣人チャイナ役のケマ・シカズウェが楽しいので、ホッとする。

 

恥ずかしながら、ケン・ローチ監督を初体験。

硬軟を取り混ぜてくれるので惹き込まれる。そこからの突き放し。

なるほど、極めて政治的な作風だ。

 

 

 

生活が浮き彫られるから、こみ上げる親密感。

爺さんだと思っていたら、59歳の設定。

だがどう見ても爺さん。ジジ専(当方)としては親身になる。

 

人気サッカーチーム・ニューカッスルの本拠地だから、サッカーネタが愉快。

が、爆笑していたのは当方(サッカー馬鹿)のみ。ぽっつーん。

プレミアリーグの選手は何十億も稼ぐのに。

セリフには無いが、そう思わせてくれる効果もある。

 

現地出身の友人と同じ訛りに、懐かしさも込み上げた。

 

だから、だ。

だから尚更に、もう嫌だという気持ちでいっぱいに。

 

こういう社会批判は必要だ。

映画という手法は、国内外に向けた告発や提起に最適。

現に今作は、カンヌ映画祭でパルム・ドールを受賞している。

 

ありきたりでは響かないゆえの、展開。

ケン・ローチ監督は一貫して労働者の味方らしい。

訴えかけが主目的だから、これ以外の落とし所が無いのも分かる。

多くの人には名作と映るかもしれない。

 

が、個人的には苦手な方向性であった。余韻が、主張で満たされてしまう。

 

富はある方に集まる。

磁石と砂鉄の関係性と同じ。

そこからあぶれた砂粒は、貧困の沼に落ちていくだけ。

それが現実だとして、また違った景色が観たかった。

 

 

 

映画 スクリーン

 

『わたしは、ダニエル・ブレイク』
I, DANIEL BLAKE
2016年・イギリス/フランス/ベルギー
監督: ケン・ローチ
出演: デイヴ・ジョーンズ、ヘイリー・スクワイアーズ、ディラン・フィリップ・マキアナン、ブリアナ・シャン、ケイト・ラッター、シャロン・パーシー、ケマ・シカズウェ

 


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