![くちびるに歌を](https://stat.ameba.jp/user_images/20150327/18/kitaco127/51/60/j/o0200028213257412863.jpg?caw=800)
『くちびるに歌を』 2015年・日本
危なかった、声が出てしまうかと思って。
ヒックヒックと号泣してしまいそう。
ぃや、号泣はしたのだけれども、どうにか嗚咽に留められた。
と思うのは自分だけで、もしかしたら劇場内でうるさかったらすみません。
泣く映画だと聞いていたから、心構えは万全。
なのに、だ。
涙で、スクリーンが見えなくなった。
新任教師と、生徒たちの交流。
合唱をキーにして。
となれば、ああいう感じかなと見当がつくというもの。
ところが、そんな予想は全て無駄。
まるで見当はずれ。
皆の心が動いて、その揺らぎでさらに何かが動く。
パズルのピースがハマっていくみたいに。
青春映画であるのに、伏線の張り方が実に巧み。
ただでさえ、それぞれのエピソードは深いのに、だ。
新垣結衣は、ぶっきらぼうで仏頂面。観客の思惑を良い意味で裏切る、配役と芝居。
水辺に立っているような清涼さだ。
生徒に対しての長身も活きた。特訓したというピアノも、見事。
木村文乃は、生徒と新任教師のつなぎ役で、まろやか仕立て。
桐谷健太の旨味で、賑やか効果。笑いもありがとうございます。
桑原兄弟の弟役・下田翔大くんがいい!普段はヤンチャだというから、余計に。
桑原兄弟の兄役・渡辺大知が素晴らしい!難役を柔軟性をもって演じている。
いつもながら、バンド・黒猫チェルシーでの歌唱時とはまるで違う。驚きっぱなし。
他のキャストや生徒も皆、素敵であり、殊に合唱ハーモニーには胸を打たれまくった。
三木孝浩監督は、本当に良い。画面の淡い色も好き。
人にベッタリ寄り添うのではなくて、半歩、隣で支えるような作風。それが優しく、心地よい。
今作で当方が号泣した部分というのは、中田永一(乙一)の原作にはないのだという。
三木監督のアイデアなのだという。
腰が抜けた。
こんなに豊かな膨らませ方があるのかと。
長崎は五島列島のロケーションも美しく。
生活の中に、教会がある風景も暖かい。
それぞれに傷を抱えた人々が、じっと耐えて生きている。
出会って、歌って、ちょっとずつ変わっていく景色。
青春映画の傑作だ。
鮮烈な風を感じた。
泣けたら良い映画、ということではない。
こんなにも心を動かされたから、止まらなくなったのだ。
だってどうしようもなく、こんなことをされてしまうともう、爽やかに泣くしかないじゃないですか。ねえ?
![映画](https://emoji.ameba.jp/img/user/uk/ukilico/426677.gif)
[関連作品]
三木孝浩監督 『ソラニン』『ホットロード』
渡辺大知 『色即ぜねれいしょん』
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