![アマデウス](https://stat.ameba.jp/user_images/20140609/18/kitaco127/3e/ec/j/o0440025712967957273.jpg?caw=800)
『アマデウス ディレクターズ・カット』 AMADEUS: DIRECTOR'S CUT 1984年(2002年)・アメリカ
当方の音楽映画NO.1と、29年ぶりにスクリーンで再会。歓喜。
天才という悪魔に出会ってしまった、矮小なる男。
ただし、その天才の本当の意味を知るのは、自分だけ。
男は天の音は聴けるのに、天の声を聞き取れない。
崇めるようにして神を呪い、堕ちていった男である。その告白劇。
父親に縛られたアマデウス・モーツァルトと、神に呪縛されたサリエリ。
2人の音が交わる、壮絶な二重奏。
削ぎ落とされたオリジナルと、肉付けされたディレクターズ・カット版。
各々の輝きは、印象が異なる。
そのどちらもが、崇高なまでのまばゆさではないか!
映画中に散らばるモーツァルトのスコアは、タイミングが完璧。
豪勢な衣装。
贅沢な舞台装置。
ロウソクの灯りだけで撮りあげられたシーンの数々。
そして、俳優の凄絶な芝居。
モーツァルト役トム・ハルスは、ピアノ初心者と思えない。指揮も同様。
回し車で走り続けるネズミのようなアマデウス像。
躍動、焦燥、大変な集中力で駆け抜ける。
そして、スイーツ・チェリーボーイことサリエリ役のF・マーリー・エイブラハムが神の芝居!
指先、笑み、声色、眼差しでどんだけ魅了するんだ、この努力王は。
メイク界の神ディック・スミスが施した老サリエリの皺の数々!なんという仕事だろう!
ピーター・シェーファーによるミステリー色高い戯曲は、一筋のほつれも無い。普遍的なテーマであり、深淵だ。
ミロシュ・フォアマン監督は妥協がない。強大なエンターテイメント。
膨大な素材をまとめあげる指揮官の腕は、芸術。
追加された20分間には、オペラ・シーンが充実。
セリフも圧倒的に増加、そうだったのかと驚くことも度々。
サリエリもまた、遠い才人だと思っていた。
が、嫉妬に堕落していくほどに、卑屈に矮小になる。
与えられた者と、与えられなかった者の苦悩であったオリジナル。
完全なる復讐劇の、ディレクターズ・カット。
神への復讐は成し遂げられたのか、否か。
もしも未見の方がいらしたら、ぜひともご覧いただきたい。
3時間があっという間。
これほどに豊饒な時間の使い方を、当方は知らない。
![アマデウス](https://stat.ameba.jp/user_images/20140609/18/kitaco127/87/28/j/o0400024612967947214.jpg?caw=800)
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