アマデウス

『アマデウス ディレクターズ・カット』 AMADEUS: DIRECTOR'S CUT 1984年(2002年)・アメリカ 


当方の音楽映画NO.1と、29年ぶりにスクリーンで再会。歓喜。

天才という悪魔に出会ってしまった、矮小なる男。
ただし、その天才の本当の意味を知るのは、自分だけ。

男は天の音は聴けるのに、天の声を聞き取れない。
崇めるようにして神を呪い、堕ちていった男である。その告白劇。

父親に縛られたアマデウス・モーツァルトと、神に呪縛されたサリエリ。
2人の音が交わる、壮絶な二重奏。

削ぎ落とされたオリジナルと、肉付けされたディレクターズ・カット版。
各々の輝きは、印象が異なる。
そのどちらもが、崇高なまでのまばゆさではないか!


映画中に散らばるモーツァルトのスコアは、タイミングが完璧。
豪勢な衣装。
贅沢な舞台装置。
ロウソクの灯りだけで撮りあげられたシーンの数々。

そして、俳優の凄絶な芝居。

モーツァルト役トム・ハルスは、ピアノ初心者と思えない。指揮も同様。
回し車で走り続けるネズミのようなアマデウス像。
躍動、焦燥、大変な集中力で駆け抜ける。

そして、スイーツ・チェリーボーイことサリエリ役のF・マーリー・エイブラハムが神の芝居!
指先、笑み、声色、眼差しでどんだけ魅了するんだ、この努力王は。

メイク界の神ディック・スミスが施した老サリエリの皺の数々!なんという仕事だろう!

ピーター・シェーファーによるミステリー色高い戯曲は、一筋のほつれも無い。普遍的なテーマであり、深淵だ。

ミロシュ・フォアマン監督は妥協がない。強大なエンターテイメント。
膨大な素材をまとめあげる指揮官の腕は、芸術。


追加された20分間には、オペラ・シーンが充実。
セリフも圧倒的に増加、そうだったのかと驚くことも度々。

サリエリもまた、遠い才人だと思っていた。
が、嫉妬に堕落していくほどに、卑屈に矮小になる。

与えられた者と、与えられなかった者の苦悩であったオリジナル。
完全なる復讐劇の、ディレクターズ・カット。

神への復讐は成し遂げられたのか、否か。

もしも未見の方がいらしたら、ぜひともご覧いただきたい。
3時間があっという間。
これほどに豊饒な時間の使い方を、当方は知らない。



アマデウス



映画 スクリーン(秋田シネマパレ)

[関連作品]
F・マーレイ・エイブラハム 『スカーフェイス』



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