$世界映画博-くちづけ

『くちづけ』 2013年・日本 


心に残る映画には笑いがある。
笑って、驚いて、知って、たじろいで、共に悩んだり、背中を押されたり。

悲しい悲しい話かと思ったら、漫才の様相。
ボケとツッコミ。
笑っていいのか?と戸惑う観客をよそに、繰り出される可笑しさのリズム。

だからこそ、浮かび上がる。現実が。
これは遠い社会の話ではなく、この国の話だ。我々の物語だ。


「障がい者」と呼ばれる人々がいて、「健常者」は助力を模索している。
車椅子、バリアフリー、エレベーター、点字、杖、盲導犬、手話や補聴器。
では、「知的障がい」を抱えた方には、どうしたらいいのか。

現状を知って、泣いてしまうし胸も打たれるのだけれど、何よりも考えさせられる。何ができるだろうか、と。


劇団・東京セレソンデラックスの舞台を映画化。
脚本・演出の宅間孝行が、無二の挑戦をしたことがよくわかる。

その宅間孝行演じる「うーやん」のキャラクターが素晴らしい!
とてつもなく愛らしい。語弊を承知で、真似したくなる魅力。子供のよう。なのに、自分の問題を知っている過酷さ。


貫地谷しほりが完璧すぎる!可愛さでできている生き物。懸命。胸に迫る芝居。いや、芝居に見えない。人が生きている。そして巨乳。

竹中直人はいつもながら、笑わせ役でない時の緊張感がハンパない。けれど、一所懸命。

橋本愛が伸びてきた。ツッコミにも勢いがあるので、ドM男子は必見。
岡本麗はやはりスゴイ。舞台のテンションで映像に登場するから、スゴイ。

舞台は未見ながら、この映画はステージそのもの。
セットは一つ、少人数の役者が出たり入ったり、セリフの呼吸も、カメラも照明も。

宅間孝行を口説いた堤幸彦監督、『明日への記憶』に続いて、病モノは若干ホラーテイストになるのはナゼだろう。
が、笑いと深刻のコントラストが極上で、思い入れの伝わる演出。


恥ずかしながら当方も含めて、この現実を知らない人は多いだろう。
彼らは、違う場所で暮らしているからだ。
それは互いにとって、不幸かと思う。

ハード面でのバックアップが通じない領域であると、改めて知った。
理解を広めていくことの重要性。
映画には、現実が見事に組み込まれている。
実に、意義のある行為だ。

そして肝心なのは、この映画が面白いということだ。
だからこそ、珠玉である。



映画 スクリーン



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