『今度は愛妻家』 2009年・日本
涙腺ぶっ壊れた。鼻水ダダ漏れ。頭が痛い。
ティッシュ一箱使った気がする。
こんなに泣かされたのは、あれ以来だ、アルジャーノン(原作に限ります)。
浮気者な夫と、夫を大好きな妻。
2人を取り巻く3人の人々。
この5人が、夫婦の家を出たり入ったり。
一幕ものの舞台のようだ。
と思ったら、舞台が原作であった。
出だしはコメディ風で、ニール・サイモン調。
夫婦の言い合いでドタバタ。
舞台のようにセリフがポンポン飛び交うわけでもなく、流れも少々引っかかる。
それがどうして、号泣になったのか。
ダメ夫は豊川悦司。
俳優には器用・不器用の2種類があるけれども、この人は不器用。
何でもこなせるわけではない。笑いは特に。
けれど後半、情けなさが輝き出すのだ。
妻は薬師丸ひろ子。
可愛い。プリプリしているのだけれど、愛情あればこそ。健気。
オカマの石橋蓮司がよすぎて参る。さすがの腹式呼吸。
濱田岳はいつもながらの愛嬌と安定感。
水川あさみはトヨエツと高音対決。芝居は必死で、いい。
アイデアは斬新ではないけれど、そもそも、中谷まゆみの戯曲が高得点。
脚本に直した伊藤ちひろも、よい働き。
セリフを確認したくて、すぐに二度見したのだけれど、うまい。
行定勲監督は大変失礼ながら、当方のハマれない監督第一位であった。
こんなに細やかだったのですね。
初見の違和感も、見返してみたら至極、自然でまた泣けた。
薬師丸がコートを羽織る。
蓮司がコートを羽織る。
それだけで涙ダーダーなのだ。
こんなにもヤラれたのは、自分がダブったこともあるけれど、何も知らずに観た効果も大きい。
未見の方はゼヒ、何も知らないままご覧ください。
滲んだ視界に、ふっと陽が射してくる。
家族や友人たちの顔が、ふっと浮かんでくる。
ぞんざいにしていたら、いつか後悔するハメになる。
画面の向こうの空間が、とてもとても近い。
泣ければよいわけではないけれど、これは良い涙だった。
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