$世界映画博-おおかみこどもの雨と雪

『おおかみこどもの雨と雪』 2012年・日本


雨上がり。アスファルト。水溜まり。湿った畳。縁側を裸足でペタペタ。
雪一面。カラリと乾いた白銀を駆ける。吸い込むと、喉がひゅっと縮んだり。
気温。湿度。水飛沫。

これ、アニメですか?
すぐそこに森が、山があるではないですか。
実写のような立体感。

でも、アニメにしかできないことをやっている。
いや、誰にもできないことをやっている。


にぎやかさと静寂の対比。
無言の数分。
走り回る、飛び回る瞬発力。
ふいに、セリフが流れ込んできたり。

気がついたら、手のひらに血が滲むくらい。ヒックヒックを何とか堪えた。鼻水は垂れるに任せた。
もっとも、早々にうどんで決壊していたのだけれど。


声を当てた宮崎あおいが、とてもいい。
母親であり少女である。必死さと可憐さ。完璧。

大沢たかおも、とてもいい。何より、カッコよい!ありゃ惚れる。

雨と雪を演じた4人がよいのだけれども、殊に、少女期の雪・黒木華。
と思ったら、NODA・MAP『表に出ろいっ!』で野田秀樹が抜擢した女優ではないか!この声は素敵。


映画館に自然を現出させた音響効果の手腕。
音楽の流麗さ。
カメラワークの躍動感。

美麗なるCG・アニメーション。
国立の街。一橋大学。グラウンド。富山の自然。匂いや空気まで描きこまれているよう。

今回もキャラクターデザインは貞本義行。加持風で、渚カヲル風で、萌える。
共同脚本の、監督と奥寺佐渡子の言葉選びが見事。


細田守監督は、日常に立脚したファンタジーを描ける監督である。
アニメ素人で恐縮なのですけれども、『耳をすませば』の近藤喜文監督、天才・今敏監督が早逝して以来、途方に暮れていた。
細田監督、長生きしてください。

富山出身の監督が富山の映画を作る。それもまた、嬉しいのである。

何より、出てくる男がみんないい。
細田作品にポーッとなるのは、男を描くのが上手いからではないか。どうでしょうか?
一本気な、良い男ばかり。惚れまくり。


育てるということ。
受け継ぐということ。
責任を果たすということ。

育っていくということ。

子を持つ人はもちろん、かつて子どもだった人は皆、参ってしまうような。
本当に、こんなものを作られたら、参ってしまう。


エンドロールが終わるまで、この世界に浸らせたいという気持ち。
だから、明かりが点くまで席を立つ人がいなかった。

あんなに大入りだったのに。



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