$世界映画博-崖っぷちの男

2012年・アメリカ 


大失禁。

手に汗を握る。
などと、生易しいレベルではない。
この夏に流すであろう全ての汗を、この102分間に流し尽くしてしまった。

映画館に迷惑をかけた。
すみません。

高所恐怖症ゆえかと思われる。
怖いのに目が離せない。むしろ、目を見開いてしまう矛盾に悶える。
高所恐怖症でなくても汗をかく状況なわけなのだ、恐怖症はいかばかりかということだ。

ああ、すみません。
興奮が尽きません。


ニューヨークのホテルの外壁、21階の中空。
男が立っているのは、そんな場所。
死の間際。

男はそこにいて、街を巻き込み、組織を飲み込んでいく。
疾走し続けるストーリー。
疾走?
そう、この男はここから動けないというのに、だ。


とにかく、全てが最高である。

無駄なセリフを排して、それでいて遊びも忘れないパブロ・F・フェニベスの脚本。
画面いっぱいに緊迫感を滲み出させた、ポール・キャメロンの撮影。
スタントマンたちの働き。
生身のアクション。

おそらく、アレコレと写り込んでしまった機材を消したり効果を上げたりと、的確に使われたCG処理。

俳優陣のキレのある芝居。
各キャラクターの肉付けも、よい。


スタント無しで壁に貼り付いていた、サム・ワーシントン。
素晴らしいこの人は誰だ!?と思ったら、アバターのあの人であった。びっくり。
今回はずっとずっと、いい。

交渉人のエリザベス・バンクスは知的で、温かみもある。
『スリーデイズ』と反対側の役。
作品に恵まれる俳優は、よい俳優。

弟のジェイミー・ベルの愛嬌には、魅力がある。
弟の恋人ジェネシス・ロドリゲス、セクシー爆発。その上、可愛らしい。

老いてなお、エド・ハリス!
抜群の存在感であり、カッコよさにクラクラする。

アスガー・レス監督はドキュメンタリー出身。
だからだろうか、臨場感が突き抜けている。長編初監督とは、これまたびっくり。
インタビュー動画を観たら、何とも賢い印象で惚れそうである。
これからもたくさん、この人の作品を観たい。


男がこんな場所に立っているのには、理由がある。
明らかになっていく過程を堪能する、まるで極上のリアルタイム。

スクリーンの中から投げ縄を放り投げられて、一気に引っ張りこまれたかのよう。


この作品、知らなければ知らないほど楽しめる。
高所恐怖症でも楽しめる。

少なくとも当方は上映終了後の駐車場で、あー、面白かった!ワオ!と叫んでしまった。日本人なのに。
たぶん、ニューヨークに魂が飛んでいたのだろう。男を見上げていたのだろう。

多くの人を、同じように叫ばせてやりたい。
なので、ストーリーはぜひ、ご自身の目でお確かめを─



『崖っぷちの男』 MAN ON A LEDGE

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