圧倒的。
ハイスクールのシャワールームから始まる物語。
更衣室の喧騒と湯気に満ちたオープニングから、若さにむせかえる。
その無邪気さ。
無邪気と残酷は同義語だ。
キャリーはいじめられており、叱責されており、縛り付けられている。
逃げ場が無いように見える。
そこに差してくる光は、とても眩い。
キャリーの美しさは、一方で、どうしてでしょうね?わずかな苛立ちも抱かせるのは?
冒頭のシャワールームの生々しさで、自分もキャリーをいじめるクラスメイトの一人であるような錯覚に陥るせいでしょうか?
その美醜のバランスが素晴らしいのだ。
シシー・スペイスクはキャリー以外の何者でもなく、儚くて弱く、激しい炎を内に育む10代を高度な集中力で演じていた。
当時27歳。信じられない。スクリーン大写しで、ほぼスッピンではないか!
ジョン・トラボルタは、ジョン・トラボルタ。そのまんまサタディナイトに直行できそうな気配。
ナンシー・アレンはハマリ役。この後、この作品を撮ったブライアン・デ・パルマと結婚するのだけれど、離婚してしまいましたねぇ。
この3人、ジョン・トラボルタ、ナンシー・アレン、デ・パルマ監督の『ミッドナイトクロス』も傑作だった。
この物語、アメフト部員のトミーがコケたら成り立たないのだけれど、ウィリアム・カットが素晴らしすぎた。
こんなイケメン、間近にいたら失禁である。
そのイケメンぶりが、ストーリーに説得力を与えていた。
何がキモだと言って、パイパー・ローリーの母親役が壮絶。
以後、キリスト教と聞くと、この狂信者ぶりが頭に浮かぶようになってしまった。おかげで、教会の無料英語教室に通えないでいる。
ブライアン・デ・パルマ監督はキレまくり。豪腕ぶりに気圧された。
年を重ねてから再び観たら、母親が迷走した理由が理解できるようになっていた。世代が変わると見方も変わる映画、それが秀作と思う。
それぞれの無邪気が生んだ結末。
スティーブン・キングが生んだ物語が、色彩をもってスクリーンに強烈に具現化されている。キャリーの体から感情が立ち上っているように見える。
あれほどの悲しいシーンは、他にないと思いませんか?
1976年製作/98分/R15+/アメリカ
原題:Carrie
『キャリー』 CARRIE
午前10時の映画祭