国道19号から三岳、王滝方面へと通じる主要地方道三岳福島線が木曽川をまたぐ元橋(木曽町)。と言っても、本稿でご紹介するのは元橋ではなく、元橋から下流を望むと緑がかった水色に塗られた鉄橋が横断しているのが見えます。今回ご紹介するのはこの橋。


 固有名があるのでしょうが、文献では「鉄管橋」とか「水路橋」、「サイホン橋」という名で呼ばれています。その名のとおり、橋の中を鉄管が通っています。


 19号を名古屋方面に南下すると、元橋交差点の先の道路反対側にJAのスタンドが見えてきます。スタンドの脇から川岸に沿って下る1本の細い道。鉄管橋はその先にあります。

木曽路名水探検隊のブログ-鉄管橋1


 鮮やかなペンキが塗られ、新しい橋のように見えますが、この橋が造られたのは昭和13年(1938年)のこと。木曽川左岸に設けられていた旧神戸発電所の取水口から取水された水を、右岸側の水路に送るために設けられたもので、対岸へ送られた水は、水路によってさらに下流の寝覚発電所まで導水され、発電機を回しているそうです。(建設当時の写真 (「工事画報」昭和13年11月号から)。200、201ページの写真がそれと思われます。)

木曽路名水探検隊のブログ-鉄管橋2


 橋梁の建造を請け負ったのが、以前、小川森林鉄道の鬼淵橋梁についてふれた拙稿 にも登場した横河橋梁製作所。上路プレートガーター、下路プラットトラスを組み合わせた構造で、送水管の上には鉄板が渡され、車両も通行できるようになっています。

木曽路名水探検隊のブログ-鉄管橋3


 大手橋 では節約のためあまり使えなかった鋼材も、この橋の建造には大胆に割り当てられています。軍需産業の電力需要を支えるためのプロジェクトとして優先的に振り向けられたのでしょう。

木曽路名水探検隊のブログ-鉄管橋4


 橋上から上流を見渡せば、眼前に木曽ダムが屹然とそびえていますが、木曽ダムができたのは昭和42年(1967年)のこと。鉄管橋の方が30年近く「先輩」です。

木曽路名水探検隊のブログ-鉄管橋5


 この橋も社団法人土木学会の「歴史的鋼橋」のリストに収録されています。あまり目立たない存在ですが、すでに70年以上も現役で寝覚発電所に水を送り続ける働き者です。一度現地に足を運んでみてはいかがでしょうか。(aki