.腱板修復術後の肩甲上神経の潜在的ダメージに関する筋電図学的検索 | popliteus mのブログ

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整形外科クリニック理学療法士の独り言

【O-0250:腱板修復術後の肩甲上神経の潜在的ダメージに関する筋電図学的検索、高井 一志、第50回日本理学療法学術大会、2015.】

 

<背景>
・腱板断裂修復術では、修復時の退縮した腱板の3cm以上の引き出しにより肩甲上神経の損傷のリスクが高くなる。

 

<対象>

・腱板修復術を実施しスクリーニング検査を希望した17例(男12名・女性5名、年齢51-80歳)。

 

<腱板修復術>

・全例ミニオープン法
 :bone tunnel法4例、スーチャーアンカー法7例、アンカーブリッジ法3例、パッチ法3例。

 

<評価>

・運動神経伝導検査運動神経伝達検査(MCS)

・肩関節自動運動を開始後、2週間以降(術後28-69日)に測定。

・棘上筋と棘下筋の複合筋活動電位を測定し、頂点間振幅の健患側比率を算出。

 

<結果>
1)振幅低下(健常人の65%未満)

・17例中5例。

・棘上筋のみ3例、棘上筋+棘下筋2例。

・断裂サイズ:中断裂1例、大断裂2例、広範囲断裂2例。

・術式:bone tunnel法2例、スーチャーアンカー法1例、アンカーブリッジ法1例、パッチ法1例。

・再検査(初回より2-3ヶ月後)で65%以上まで回復。

2)挙上獲得可動域の平均値(自動/他動)

・振幅低下なし群:137°/168°(平均4.8ヶ月、2-12ヶ月)

・振幅低下あり群:115°/159°(平均8.0ヶ月、3-14ヶ月)

 

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断裂サイズの比較的大きい腱板断裂修復術では、少なからず肩甲上腕神経の損傷があるようです。

 

経過とともに改善していくようですが、後療法を進める上では、術後の筋機能の低下には、肩甲上腕神経の損傷の影響もあるということを理解しておく必要はあります。

 

また、術後半年では可動域の左右差は30度程度はあるということも貴重な情報です。

 

術後の不満やあせりを減らすためにも、事前にこのような情報を伝えておくことは必要かもしれません。