「…なんで閉めるかな?うん?」
極上似非紳士スマイルをキョーコに向ける蓮。
それも仕方ないだろう。
最近、会えなくて、やっとキョーコに会えたと思ったら、会いたかったとちゃんと口にする前に彼女にドアを閉められたのだから。
好きな子に閉め出されて、傷つかない人間などいない。
「す、すみません…!思わず!」
「…思わず?思わず閉めるほど、俺のことが嫌い?」
「ち、違います!敦賀さんのことは好きです!!こ、後輩として…!!」
「…後輩…。」
蓮は凹む。ただの先輩と言われたようで…。
「…なにか見てたの?」
話題を逸らそうと蓮はテーブルの上にあるパソコンに目を向けた。
「あ…いえ…調べ事を…。」
「調べ事?なにを?」
「…好きな人について調べてました…。」
キョーコは若干小さな声で言ったが、蓮の耳にちゃんと届き、彼は立ち尽くした。
「…好きな…人…?」
「はい。ある映画を見て一目惚れしまして…。」
「一目惚れ…。」
照れた表情を浮かべるキョーコを見て、蓮は絶望的になった。
「…名前は?」
「え?」
「名前。その人の。」
「えっと…クオン・ヒズリさんです。」
「…え?」
蓮は面食らった顔を思わずした。
「クオン・ヒズリ…?」
「はい、先生の息子さんなんですけど、凄く綺麗な人で!思わず好きになっちゃいました。」
「…そう。」
「あの敦賀さん…?」
「なに?」
「…怒ってますか?」
「…怒ってないよ。」
「本当ですか?」
「怒ってないから。ただ…。」
「ただ?」
「…何でもないよ。」
(言えるわけないじゃないか…この嫉妬をどこに回したらいいのか分からない、なんて…相手は自分なのに…。)
彼女は知らないが、クオンは蓮の本来の姿であり、本名だ。
はっきり言って自分自身に嫉妬しても馬鹿馬鹿しいが、
「…彼のどこが好きなの?」
どこが好きなのかは聞いてみる。
「見た目です!」
キョーコはキッパリ答え、
「まるで王子様みたな、あの容姿が大好きです!!」
目を輝かせた。
(…つまり見た目だけって事か…?)
中身はどうでもいいのかと考える蓮。
「…王子様…ね。」
「い、良いじゃないですか!どうせ私は面食いです!!」
キョーコは怒った顔をして顔を逸らすと、
「じゃあ、俺でも良いよね?」
「…え?」
右手をとられて、蓮が床に片膝をつけてしゃがんだのが分かると右手の甲にキスされた。
「ご機嫌よう、麗しい姫君。」
神々スマイルをしながら、蓮は下からキョーコを見つけて、
「…!?な…ななななな!?」
思わず蓮の手を払ったキョーコは右手を抱きしめ、顔を真っ赤にしたのだった…。