封じ込めた宝箱。

けれど、彼はそれを開けてしまった。

(…苦しい…ツラい…だって、敦賀さんには好きな人がいるんだもの…。)

開けられた宝箱を閉めることは出来なくなっていた。

そんな時だった…。

「敦賀さん…。」

彼女が彼を呼ぶと蓮は振り返って笑ってくれる。

キョーコは笑い返すと彼に近づき、そんな彼女を蓮は愛しそうに見つめると抱きしめた。

(…これは夢…私の都合のいい夢…でも…。)

「好きだよ、最上さん。」
「私も好きです。敦賀さん…。」

(…せめて夢の中で…幸せになりたい…。)

夢の中、キョーコは彼のキスを受けながら涙を流した…。

「…朝…。」

そこでキョーコは目を覚ます。

「また泣いてたみたい…。」

頬と枕が濡れているため、泣いていたと分かった。

「救いなのは目が腫れてないことかな…。」

目が腫れていると周りに心配されるため、腫れてないほうが喜ばしい。

「…やだな…敦賀さんに会うの…。」

今日は同じ番組に出る予定だ。

正直会いたくない。これ以上好きになりたくないから…。

「そう思うのに…やっぱり会いたいなんて笑っちゃう…。」

恋は残酷だ。それでも会いたくなるのだから…。

「あ…そろそろ着替えなきゃ…。」

今日は午前中まで学校に行くつもりな為、キョーコは布団から出て布団を片付け始めた…。



その夕方。

「…最上です。」

トントンとキョーコは楽屋のノックする。

「あ…ちょっと待ってて!キョーコちゃん!」

反応したのは社のほう。

「はい、どうぞ。」

笑顔で社はドアをあけ、

「おはよう、最上さん。」

なんとも神々しい笑顔を見せる蓮。

「おはようございます、敦賀さん。」

そんな彼にキョーコは笑顔を貼り付けて挨拶を返した。

(…その笑顔を向けるのは止めてほしい…勘違いしちゃいそうだから…。)

ズキズキ胸が痛んで切なくて…泣きそうになる。

「今日は宜しくお願いします。それじゃあ、私は自分の楽屋に戻りますね?」
「え!?もう行くの!?」
「ゆっくりしててもいいんだよ、最上さん。」
「いいえ、実は近日に学校のテストがありまして…勉強をしないといけないんです。」

嘘だ。本当はテストなんてない。

ただ蓮と一緒にいるのはツラいから逃げたいだった…。