オルガンシューズ | さいちゃんの教会音楽な日々

オルガンシューズ

 朝からどんよりした、嫌な天気。私の血圧も一向に上がってこないので、仕事に出かけるのが一仕事(!)という感じ。
 仕事が終わったらオルガンの練習をしようと思って、いつものかばんの他に巾着袋に入れたオルガンシューズを提げて出かけ……



 どこかに忘れてきてしまった_| ̄|○



 ピアノの生徒の家に行くのに、電車→バス→電車と乗り継いで、降りた後で手に持っていないことに気づいたのである_ _;
 不注意が服着て歩いているような、忘れ物が特技の私だから、かばんの他に物を持ち歩く時は要注意なのだけど…それにしても商売道具を忘れるなんて。モノが特殊な靴だけに、落し物センターに届きそうな気もするが、失くした今日が金曜日だから、取りに行けるのは早くて月曜日だし、出てくる保証はない。
 出張レッスンの道すがら、くよくよ考えもしたのだが、最後のレッスンが終わる頃には頭が切り替わっていた。



 この際、セカンドシューズを作ろう♪



 何せ、よその教会で弾く時にうっかり靴を忘れて行ったりする上、持ち歩くとこの通りどこかに忘れる可能性が高い私。メインのホイマーデン教会に置いておく靴と、家にもう一足持っていた方がいいと思っていたものの、緊急を要していないせいもあってなかなか腰が上がらなかった。今がセカンドシューズを作る絶好のチャンスである。
 …というわけで、仕事の後街に繰り出すことに。私の懐具合に合う靴屋さんとなると、やはりDeichmann かな…ということで、店に直行。

 これだけオルガン人口の多いドイツなのに、専用の「オルガンシューズ」という製品はない。日本はオルガン人口が少ないにもかかわらず、銀座ヨシノヤ なんかがちゃんと専用シューズを作っているのに…。厚手のソックスを履いて弾く人もいれば、ダンスシューズを代用する人あり、革底の靴を買って使う人あり、とドイツのオルガニストの足元は多種多様である。オルガンシューズを商品化して、一儲けを企む輩はこの国にはいなかったのだろうか?ある意味、非常に不思議ではある^^;
 そんなわけで、Deichmannで私が買うのは何のことはない普通の靴で、その靴に後で手を加えてもらうことになる。だが、「普通の靴」といっても、いくつかの条件がある。

 1.自分の足に合った靴。紐靴が望ましいが、足にぴったり合っていて脱げて来ないなら大丈夫。
 2.少しかかとのある方が弾きやすいが、高すぎてもダメ。また、かかとでも鍵盤を弾くため、ピンヒール系は×。
 3.つま先は近頃流行(?)の先の尖ったのは×。角ばっているのは程度による。
 4.靴底のはりかえが可能であること。
 5.色は出来るだけ黒。

 普通に自分の足に合った靴を探すのだって難しいのに、近頃の流行のせいもあって、オルガンシューズとしての全ての条件を満たした靴はなかなか見つからない。Deichmannではちょうど靴の半額セールをやっていたのだが、そのコーナーの靴は一瞥しただけで全滅とわかった。仕方ないので値引きなしの普通のコーナーへ。
 まずは一足、とてもいい型の紐靴を見つけた。足にもぴったりなのだが、色がヘンな感じの茶色である。これで黒なら即買いなのに…。仕事で黒いスーツを着ることが多いため、この茶色では合わない。
 他のコーナーで、かかとがあって底をはりかえられそうな黒い靴を片っ端から試してみる。私の足のサイズはドイツの37と38の中間ぐらい(日本の24.0~24.5cm)。ドイツでは普通のサイズなので、それだけはありがたい。
 途中で、普段用にとても履き心地のいい靴を見つけてしまった。かかとがないのでオルガンには向かないのだが、普段履きも買い換えようと思っていたので先に決めてしまう。それにしてもオルガン用の方がなかなか見つからない。形が良くてもかかとがなかったり、かかとがあっても底のはりかえの出来ないタイプだったり、形もかかともバッチリなのに足に合わなかったり…_ _;
さいちゃんの教会音楽な日々-Orgelschuhe1
 最終的にこの靴に決めたのだが、選ぶのに結局1時間以上もかかってしまった。紐靴ではないが、足にはぴったりで脱げてはこないので大丈夫だろうと判断したのだ。適度にかかともあり、つま先も丸い普通の形で、条件は全て満たしている。値段も39,90ユーロで、そこまでお高いものではない。
 さて、もう夜7時半になっていたので、買った靴を持って大急ぎで駅前のMISTER MINIT へ。日本にもあるからご存知かと思うが、靴やかばんの修理、合鍵作りなどを専門にしている店だ。
 扉を開けたら、いかにも職人気質なおじさんが後片付けをしているのが目に入った。8時閉店なのだ。買ったばかりの靴を取り出して、台の上に並べる。
 「こんばんは。あの、特別なお願いがあるんですけど」
 ほう、という顔でこちらを見るおじさん。「この靴の底を、かかとも全て革にはりかえて欲しいんです。」
 「ふむ、それは出来るけど、何に使うの?」
 「私オルガン弾きなんですけど、足鍵盤を弾くのに底の滑りやすい靴が必要なんですよ。」
 「なるほど。でも、革は明るい色なのに、黒い靴の底には合わないんじゃない?」
 「(おじさん妙におしゃれだなーと思いつつ)それは仕方ないですよ^^;」
 「わかった。こことここ(指で指しながら)に革をはるのね。いつ引き取りに来る?明日?」
 「明日までに出来ます?」
 「うん、午後には引き取れるようにしておくよ。それと、35ユーロほどかかるけどいい?」
 「もちろんです。」
 合計約75ユーロ。銀座ヨシノヤのオルガンシューズが約2万6千円だそうだから、大変安上がり。^^;
 あとはおじさんの腕前を拝見させていただくとしよう。

 …というわけで、思いがけずセカンドシューズを作る羽目となってしまったわけだが、確かオルガンシューズを作るのは6年ぶりなので良しとしようと思う。これで、なくなった方の靴も無事出てきてくれれば万々歳なのだが…。